タイムスリップしたような、どこか懐かしい町並みの城崎温泉。この風情を味わうために今、外国人観光客が殺到している。彼らの心を掴んだ、町の取り組みとは。
【写真】夜の城崎温泉
夜の城崎温泉(写真=663highland/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons)

暮れなずむ時間帯――。

城崎きのさき温泉の町の真ん中には川が流れ、太鼓橋がかかる。両岸には柳の葉が風にそよぎ、昭和初期の木造の旅館が立ち並ぶ。観光地で見かける大きな看板などはなく、茶系で統一されたすっきりとした町並みだ。

街灯が点き、旅館の灯りも外に漏れる。温かみのあるほんのりとした灯りに包まれると郷愁が漂う。

2024年10月――、この日も宿の夕食前に町に出た。

カランコロンと下駄を鳴らす音が響き、町は人で賑わっていた。宿の浴衣やおしゃれ浴衣を着て、そぞろ歩きをしている。

その多くは外国人。みな一様に、温泉町の写真を撮っている。コロナ蔓延中には全くいなくなった外国人観光客がすっかり戻ってきていた。

私が宿泊した志賀直哉ゆかりの「三木屋」は全16室と小規模で、登録有形文化財に指定された木造建築の旅館。手入れが行き届いた日本庭園を眺めながらロビーで寛ぐお客の半数は欧米人だった。

フランスからという夫妻は「日本の田舎が好き。今回は2週間、レンタカーを借りて地方を旅した。東京から金沢に入り、福井、高山と巡ってから城崎に来た。城崎では3泊して、明後日には帰国。日本を満喫した」と、楽しそうに話してくれた。

城崎の魅力を訊ねると「古い町並みと日本旅館と温泉」と即答した。

海外観光客が求める「懐かしさ」

城崎温泉は外国人観光客数が8年間で55倍と急増。年間で約6万1000人が世界中からはるばる兵庫県北部へ訪れる。京都駅から特急で2時間半かけてだ。