グラスを磨いても中身は変わらない

これ、場合によっては入れ替わります。

よくよく飲んでいったら、当然のことながら、味はシャンパンのほうがおいしいはずなんです。だけど、イメージだけで順位が入れ替わる。グラスの華やかさで、一瞬騙されてしまう。

「話し方」でいえば、身振り手振り、声の出し方や資料の作り方というのは「グラス」です。

グラスをどれだけ磨いても、中身のクオリティは上がらない。これを多くの人は忘れているんです。

もちろん、いいものを使いたいからグラスを磨くというのも、それはそれでかまわない。だけど、その前に「中身」じゃないですか、ということをお伝えしたいのです。

全員が納得する「単位」はない

もうひとつ、例を挙げましょう。

フィギュアスケートは、基本的には「うまい」という表現で評価します。「スケートがうまい」。そのうまさを競う競技です。体操なんかもそうですね。

競うからには「単位(評価基準)」があります。フィギュアスケートには「必ずこの技を入れなければならない」とか、「姿勢がまっすぐでなければならない」とかっていう単位があって、その単位にちゃんと即した状態で演技しているかどうかによってポイントをつけるわけですね。

そして、それぞれの項目のポイント、その合計が高い低いっていうので競技が成り立っています。

ところが、協会の人たちが一生懸命考えて、その単位を作って、公平性を担保するようにして……それでも揉めるじゃないですか。やれ「買収されてるんじゃないか」とか「あいつは見る目がない」とか。“疑惑の判定”みたいな話が持ち上がってくる。

つまり、全員を納得させる単位ってなかなか作れないんです。

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写真=iStock.com/Artis777
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