知らぬ間に進む両肩の硬化

●結果が意味するもの

肩周りにどんな感じがしただろうか? このテストをやると、どれだけ両肩が硬化しているか知ることができる。

・腕が上がらない
腕を頭上に上げる機会が少ないことが原因だろうが、肩の可動域が狭い状態にある。モビライゼーションをやるようにすれば、すぐに改善できる。

・床からパイプが上がるものの、維持できなかったり、うまく呼吸したりすることができない
わずかでも動いたことを励みにしよう。努力すれば、少しずつ高くまで上げられるようになる。

・床から3~5センチ
肩を屈曲させることはできるが、その姿勢が自分のものにはなっていない段階だ。少し疲れているとキープできないかもしれない。練習すれば、エンドレンジに届く。

・床から5センチ以上離れている
すばらしい。肩を屈曲させるうえで何の問題も抱えていない。今の可動域を維持するために、次に説明するウォール・ハングをときどきやってほしい。

そのうえで、週に一度、再テストをしてみよう。

娘を肩に担ぐ父親の後ろ姿
写真=iStock.com/miniseries
※写真はイメージです

肩回りの可動域を広げるには

ここでは、2つのモビライゼーションを紹介する。モビライゼーションは、筋力を増強するためのエクササイズではない。関節を動かすことで、圧迫されていた軟部組織(皮膚、神経、筋肉、腱)をほぐし、本来の動きのパターンに体を慣らして、戻すことが目的になっている。

1.ウォール・ハング

壁から離れて立ち、背中を平らにして腰を曲げ、手のひらを平らにして壁につける。頭を両腕の間に入れたまま、肩を外側に回して(肘の内側の窪みが空を向くように腕を回転させる)、壁に“寄りかかる”。そのまま大きく10回呼吸する。呼吸をしながら、背中と胸郭を広げることを意識する。

【図表2】肩回りの関節を柔らかくする
すごい可動域』P.135より
2.回旋筋腱板モビライゼーション
ケリー・スターレット、ジュリエット・スターレット『すごい可動域』(かんき出版)
ケリー・スターレット、ジュリエット・スターレット『すごい可動域』(かんき出版)

このモビライゼーションが回旋筋腱板(肩甲骨と上腕骨をつなぐ4つの筋肉の腱)に与える効果は顕著だ。床に仰向けになり、膝を曲げる。右肩と上腕が接する点の下にボールを置く。回旋筋腱板にボールがぴったり収まるように、わずかに右側を向く。腕の下にボールを入れないように気をつける。

右腕を横に伸ばし、肘を90度に曲げ、前腕を床に対して垂直にする。ゆっくりと呼吸しながら、ボールの上にある筋肉を収縮させる。次に同じ筋肉を弛緩させる。これを10回行う。そこから、肘を床につけたまま、前腕を前・後ろへと行けるところまで動かす。これを10回、左右を入れ替えて行う。

【図表3】肩甲骨と上腕骨をつなぐ筋肉をほぐす
すごい可動域』P.136より

これらのモビライゼーションを生活に取り入れて、ぜひ健康な体を手に入れてほしい。

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