2025年に「団塊の世代」の全員が75歳以上となり、国民の5人に1人が後期高齢者となる。社会保障費は高まる一方で、現役世代の社会保険料の負担がさらに大きくなるのは必至だ。医師の筒井冨美さんは「介護の現場の人材不足は深刻で、財政的にも公費による高齢者医療・介護で『可能な限り延命し手厚く介護』する現在のやり方を根本的に変える時期にきたのではないか」という――。

立民と国民民主が「訪問介護」緊急支援を要請した背景

2025年1月29日 立憲民主党と国民民主党は、2024年度に介護報酬が減額された「訪問介護」に深刻な影響が出ているとして、緊急支援の法案を衆議院に共同で提出した。確かに、先の介護報酬改定では「利益率が高い」と判断された訪問介護関連項目は2~3%減となっている。

介護事業者の倒産が過去最多

2024年の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産は、過去最多の172件(前年比40.9%増)、と報じられた。中でも介護報酬のマイナス改定が直撃した「訪問介護」が過去最多の81件。倒産のみならず事業所の休廃業も相次ぎ、訪問介護事業者のない自治体は107町村にのぼり、今後もさらなる“空白”地域の拡大が予想されている。

少子高齢化が進むなか、介護ニーズは高まる一方だが、昨今の人手不足で介護職員の確保も簡単ではない。コロナ禍で悪化した経営を立て直せず、物価上昇に耐えられない事業者の倒産や休廃業は今後も続くだろう。

年配の女性と女性看護師のストレッチ
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進行する介護人材不足、進まぬ対策

介護業界の中でも、訪問看護を担うホームヘルパーの不足は特に深刻だ。令和4(2022)年度の有効求人倍率は、全職種1.31倍、施設介護員3.79倍に対して、ホームヘルパー15.53倍と報告されている。(※第225回 介護給付費分科会 全国社会福祉協議会 全国ホームヘルパー協議会 意見陳述)

このような人材不足に対して、厚生労働省は「介護のしごと魅力発信等事業」を行っており、若い読者向けに雑誌『anan』や『POPEYE』への記事掲載、介護マンガ制作、ポータルサイト作成、各種イベントや動画配信など、それなりに予算と人員を費やしているが、今のところ効果があったとは言い難い。そうした予算を介護職の給料に回せばいいのではと思うのは、私一人ではあるまい。