2025年で「阪神・淡路大震災」から30年
あらためて「おむすび」の設定を振り返ろう。
NHKのサイトによれば、「平成元年生まれのヒロインが、栄養士として、人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”」である。近年の「朝ドラ」の多くと同じように、主人公・米田結(橋本環奈)の幼少時は描かれず、平成16年4月、福岡県糸島の高校入学から物語が始まる。
結は、自分に絡んできたギャルを嫌うものの、次第に仲良くなり、パラパラに取り組む。米田家が平成7年の阪神・淡路大震災で被災していた過去が語られたり、栄養士を目指すようになったり、再び神戸に戻ったり、と、成長とともに舞台を移す。
NHKとしては、たぶんに、2025年1月17日が阪神・淡路大震災から30年を迎えるところにあわせて、ドラマを作ったと思われる。「おむすび」をタイトルにし、結の職業と関係づけた理由について、脚本家の根本ノンジ氏は、次のように語っている。
震源地から少し離れ、比較的被害が少なかった兵庫県の丹波地域に住む女性たちがおむすびを握って、被災地に届けたという話だ。涙をこらえながらおむすびを握ったという女性のインタビュー動画を見て、描くべきことが見えてきた
(NHK出版デジタルマガジン「連続テレビ小説「おむすび」脚本家・根本ノンジさん寄稿 平成を生きた「私たちの物語」を描きたい」)
NHKがドラマに込めた「意図」
被災地に届けられたおむすびをギャルが握る。ここに根本氏の、そして、NHKのこのドラマに込めた意図がある。根本氏は、米田結をギャルにした理由を「失われた30年」と語られる平成史のなかで、「逞しく、軽やかに肩で風を切って歩いていた女性たち」が「ギャル」であり、「ギャルが朝ドラのヒロインをやったらどうなるのだろう」と思ったと、同じ寄稿で述べている。
「いろんな意味でハレーションが起きそうな予感もあったが、それ以上にギャルという存在にはワクワクする何かが備わっている気がした」と述べた、その予感は、どうなったのか。