12月22日の「M-1グランプリ2024」(テレビ朝日系)で再び漫才日本一に選ばれた30歳と31歳の2人組「令和ロマン」。お笑いについての著作があるラリー遠田さんは「2年目の令和ロマンは予選の段階から自分たちを害悪だと言い、憎いヒールに徹してきた」という――。
白い背景にトロフィー
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令和ロマンが「連覇」という前例のない挑戦をした理由

20回目を迎えた2024年の「M-1(エムワン)グランプリ」は、令和ロマンの連覇という劇的な幕切れに終わった。「M-1」ではこれまでに連続優勝は一度もなかったし、2回の優勝を経験した人も存在しない。

そもそも、優勝した翌年に再度出場をすること自体がきわめて珍しいことだった。「M-1」に出る芸人のほとんどは、優勝することを最大の目標としている。一度でも優勝を果たしたのならば、その後でまた出る必要はない、と考えるのが普通のことだ。

だが、令和ロマンは再び参戦を決めた。それは、ボケ担当の髙比良くるまの中で、一度目の優勝について割り切れない思いがあったからだ。

くるまは「M-1」という大会を愛していて、そこに芸人人生のすべてを捧げてきた。「M-1」という大会を盛り上げることが自分の使命であると考えていた。

自分たちが優勝することより、M-1を盛り上げたかった

彼は自分たちが優勝することよりも、大会全体が盛り上がることを望んでいた。「そんな芸人がいるわけがないだろう」と思われるかもしれないが、彼の発言や著書の内容をたどっていくと、それが紛れもない本音であることがわかる。

くるまは昨年の「M-1」を「(はからずも)自分たちが優勝してしまった大会」というふうに捉えていた。もちろん優勝自体は悪いことではないのだが、大会全体が今ひとつ盛り上がりに欠けたことに不満を持っていた。

決勝の出番順を選ぶ「笑神籤えみくじ」のくじ運に恵まれなかったせいで、同じような漫才スタイルの芸人が立て続けに出てくることになり、観客に比較する目線で見られてしまった。そのことで盛り上がりに欠ける戦いになってしまった。彼はそのように分析していた。

だからこそ、令和ロマンはもう一度「M-1」に出ることを選んだ。優勝直後にコメントを求められたくるまが「来年も出ます!」と宣言したとき、ほとんどの人はそれをただの冗談であると考えていた。だが、彼は本気だった。