人の愛情の裏表に敏感であったワケ

川端の作品は、孤児であったことが大きく影響しています。人の愛情に対してとても敏感だった川端は、昭和43(1968)年に日本人初となるノーベル文学賞を受賞したとき、毎日新聞夕刊に随筆『思ひ出すともなく』を寄稿しました。

自分が孤児であったことが多くの巡り合わせを生み、人生において恵まれたことを次のように述べています。

「しかし、私の人生でのもろもろのありがたいめぐりあいは、孤児であったから恵まれたのではないかとも思う。恥づかしい秘密のようなことであるが、天涯孤独の少年の私は寝る前に床の上で、瞑目合掌しては、私に恩愛を与えてくれた人に、心をこらしたものであった」
『思ひ出すともなく』(『一草一花』講談社文芸文庫に収録)

少年のころから寝る前に、その日の出来事を振り返り、自分に親切にしてくれた人々に対して合掌し、感謝の気持ちを示していたのです。人に優しくされることに、人並み以上に深い感謝の念を抱いていたことが伝わってきます。