大人向けの娯楽読み物「黄表紙」本でベストセラーを連発

この前後、蔦重がベストセラーを連発するのは「黄表紙きびょうし」です。草双紙と呼ばれる絵入り娯楽本の一分野で、もともとは子供向けの本が主流でしたが、やがて風刺や洒落を利かせた大人向けのものも登場。表紙の色によってジャンル分けがされ、昔話など子ども向けの赤表紙、浄瑠璃や歌舞伎をテーマとした黒・青表紙などがありました。

「黄表紙」というジャンルも、元々は鱗形屋孫兵衛(「べらぼう」で演じるのは片岡愛之助)が企画開発したものです。安永4(1775)年に刊行された恋川春町こいかわはるまち作・画の『金々先生栄花夢きんきんせんせいえいがのゆめ』が記録的な大ベストセラーになりました。「一炊の夢」の故事で知られる謡曲『邯鄲かんたん』を下敷きにした作品で、以下のようなあらすじです。