ユニクロに「+1000円」の絶妙な価格
グローバルワークは着実に売り上げ規模を拡大していきます。ついに500億円を突破し、2030年2月期の売上高目標に1000億円を掲げるまでに成長しました。直営型アパレルブランドにおいて、単独で売上高1000億円を国内で達成しているブランドはユニクロ、ジーユーなど数えるほどしかありません。値段的にも商品デザイン的にもこれといって大きな特徴のないグローバルワークが好調な理由はどこにあるのでしょうか。
まず、価格的には決して激安とは言えないながら、高すぎるわけでもありません。ユニクロに平均的に1000~2000円プラスするだけで買える価格帯なので、買いやすい価格帯だといえます。
対象顧客は20代後半~40代前半の子育て世代の家族だと思われますが、その世代には比較的に手の届きやすい価格帯でしょう。ただ、2020年以降世界的に原材料費・燃料費の高騰などで価格は上昇する傾向になったので、さらに値段を抑えた「グローバルワークスマイルシードストア」という新ラインも開始しました。
次に商品デザイン面ですが、いわゆるベーシックなデザインの商品が多くあります。またブランドロゴが入っている商品もほとんどありません。ベーシック寄りデザインで胸にブランドロゴも付いていないので、ユニクロやジーユーといった他社のブランドともコーディネートしやすくなっています。
アメカジからの脱却で「新しいマス層」を開拓
そして3つ目には、ビンテージテイストの従来型アメリカンカジュアルからうまく脱却できたことを挙げたいと思います。これはあくまでも個人的な意見で業界の総意とは言えませんが、グローバルワークを含め、アダストリアの全ブランドに当てはまるのではないかと思っています。
色落ちしたジーパンにトレーナーを合わせてその上からワークジャケットを着るといった代表的なアメリカンカジュアルテイスト一辺倒のブランドは、2000年代半ば以降、苦戦している傾向が多く見られます。
そのテイストをどうにかこうにか守り抜いて来た全国規模のジーンズカジュアルチェーン店のトップ2だったライトオンとマックハウスが減収減益を続けて、ついに買収されるようになったことがそれを象徴しているといえます。
それ以外でも、アメリカンイーグルやオールドネイビーが早々に撤退に追い込まれたこと、アバクロンビー&フィッチが鳴り物入りで上陸したものの鳴かず飛ばずを続けていることも、国内マス層の従来型アメリカンカジュアル離れの一端だと見ています。
アメリカンカジュアルの需要は決してゼロにはなっていませんが、もうかつてのようなマストレンドではなくなっているようにみえます。グローバルワークを含めてアダストリアの全ブランドは一早くそこから脱却して都心型カジュアルブランドへと変貌しました。
もちろん、旧来のファンはいたでしょうが、それよりも成長性を考慮して新しいマス層を掴みに行ったと考えられます。当時は懸念する声も多くありましたし、実際に離れた顧客もいたと思いますが、結果的には新しいマス層を取り込むことに成功したといえます。