逆に肝機能を疲弊させてしまう

たとえば、シジミのオルニチンには解毒作用を上げて、機能低下した肝臓をサポートする効果が報告されています。ただ、その一方、シジミには鉄分が多く、その鉄分が弱った肝臓をさらに弱らせてしまう恐れもあります。

肝臓には鉄などのミネラルを貯蔵する働きがあって、普段から鉄を摂り過ぎていると、多くの活性酸素が発生して肝臓の炎症を加速させてしまうことになりかねないんですね。

ウコンも、肝臓の疲れを取るとされ、数多くのサプリが市販されています。ただ、こちらもシジミと同様に鉄分が多く含まれているのです。なかには、鉄分を含まない商品もあるようですが、私は、スマート外来にやってきた患者さんがウコンを飲んでいた場合は、まずそれをやめてもらうようにしています。

ウコン以外の「肝臓によいとされる漢方薬」にも言えることですが、「薬効が高い」とされているものは、必ずと言っていいほど肝臓に負担をかけることになります。その薬効成分を代謝したり解毒したりするために、弱った肝細胞にさらなるハードワークを強いることになり、逆に肝機能を疲弊させてしまうことにつながってしまうのです。

肝臓によいと信じて長年飲んできた薬やサプリが、じつは肝機能を障害する原因になっていたというケースも少なくありません。脂肪肝や脂肪肝炎を抱えている方は、こうしたものに対しては安易に手を出さないほうがいいでしょう。

「足し算」ではなく「引き算」で考える

そもそも私は、肝臓の健康を長くキープしていくには、「肝臓にいいものを多く摂る」のではなく、「肝臓に悪いものをできるだけ減らす」というスタンスをとることが大事だと考えています。

つまり、「あれを摂りましょう、これを摂りましょう」ではなく、「あれとこれをやめてみましょう」という姿勢を基本にするべき。「足し算」ではなく、「引き算」の発想で肝臓をよくしていこうと考えることが重要なんですね。

いまの食生活から真っ先に引き算をするべき対象は、もちろん「甘い飲み物」です。比較するのもヘンだとは思いますが、肝臓の疲れを回復させるという点では、たぶん甘い飲み物をやめるだけで、「シジミ」や「ウコン」の何百倍、何千倍もの効果が得られるのではないでしょうか。