「自分探しの旅」ではやりたいことは見つからない
【澤円】面白いですね。まずは、自分の「好き」という気持ちを受け入れて、具体的にインプットを続けていく。そして折に触れて、それぞれの体験に共通する本質を振り返るなかで、自然と「やりたいこと」につながっていくイメージですね。
【片石貴展】だから、「やりたいこと」を無理に見つけようとするほど、見つかりづらいのではないでしょうか?
よく、「自分探しの旅に出る」みたいなことを見聞きしますが、「それで本当に見つかるの?」と思います。だって、どこへ行こうとも、自分は常にそこにあるじゃないですか(苦笑)。「内省に適した環境を選ぶ」という考えなら理解できますが、別の場所へ行けばなにか重要なインプットがあり、突然、雷に打たれたように自分が見つかるといったことはないと思います。
あえて起業家とは真逆の「金髪ジャージ姿」にした
【澤円】自分の「やりたいこと」が見えてきたとき、それを実現するための行動が重要ですよね。まず、2018年のyutori創業にあたり、片石さんはどのような行動をされたのでしょうか?
【片石貴展】創業後まもなく最初の資金調達を実施するのですが、当時24歳のわたしには投資家とのつながりが皆無でした。そこで、自分が「この人」と思う方々にTwitter(現X)のDMを送って会っていただき、そこからファイナンスしていったのです。そうした行動はあたりまえにすることだと思っていました。
【澤円】既に成功している起業家や投資家にDMを送るまではする人はいるでしょう。しかし、実際に会ってもらうためには、どのようなメッセージを送るのかが重要ではないですか?
【片石貴展】おっしゃる通りです。みなさん多忙なので、やはり興味を持たれるためのフックが必要です。当時、わたしが運営していた国内最大規模のコミュニティ「古着女子」には、わずか5カ月という短期間で約10万人のフォロワーが集まっていました。Instagramを活用したD2Cの黎明期において、おそらくみんなこの情報がほしいだろうと踏んでいました。
また、プロデュースという視点にも通じますが、あえて金髪でジャージという外見にしました。白シャツにジャケットというよくある起業家とは真逆のイメージをつくったわけです。そうして自分が与えるインパクトと、相手にとって気になるインプットを掛け合わせてアピールし、会ってもらったという流れです。