増えた「50万人の自民党員」の内訳
自民党の党員は、2009年~12年の民主党政権による野党期で60数万人まで減少した。それが第二次安倍政権を通じて復調し、2024年現在は約110万人程度といわれる。要するにここ10年強で50万人が新たな自民党員になったわけだ。
自民党は毎年、党員獲得上位の議員を公表しているが、その上位は青山繁晴、高市早苗、片山さつき、杉田水脈などのネット右翼に好まれる議員がずらりと並んでいる。
雑駁な計算では、この増えた50万人のうち、半数か若しくはそれ以上がネット右翼的な傾向を持つ党員であろう。9月の総裁選で高市が党員・党友票で109票と、石破の108票を上回ったのは、このような背景がある。
さすれば、有権者全体でみれば数%のマイノリティに過ぎないネット右翼は、自民党総裁選においては党員票に対し数割(おそらく3割前後)もの力を持っている大きな勢力となる。
石破首相にとって潜在的危険因子に
今後の総裁選は、ネット右翼の声を黙殺することができない情勢になる。そのたびに一旦沈降したかに見える高市待望論は「いつでも」再沸騰し、石破政権を内部から食い破る潜在因子となり得る。
ただしその場合でも少数与党の枠組みは変わらないので、再沸騰の可能性は高いわけではない。だが当然ゼロとは言えない。退潮したとはいえ、あえて「ポスト石破」を挙げるとすれば、2024年の段階では、いまだ高市であろう。
たとえこれまでネット右翼を勧誘してきたこれらの議員が下野しても、一度党員になった者は党員費を遅滞なく収め続ければ総裁選での有権者となり続けるのだ。議員は時の運によって消える運命だが、党員はそう簡単に消えない。
石破にとっての潜在的危険因子とは、すでに自民党の奥深くに入り込んだネット右翼という数十万人の党員にほかならないのである。(本文中敬称略)