リースバック物件を購入すれば生き延びられるのか
雅彦さんの不安は尽きません。
「まとまった現金が手元にあるのはよいことなのですが、現金は使ったらその分減っていきますよね。日々現金が減っていく恐怖を味わいながら『あと何年もつのだろう?』と考えて生きていくのもしんどいです。せっかくまとまったお金が手に入るので、それを活用した対策は何か立てられないものでしょうか?」
「現金を別の形に変えて、資産の減少を緩やかにする方法もあります。それは『お母様から贈与された現金で雅彦さんが賃貸物件を購入し、その家賃収入を雅彦さんの生活費に充てる』といったものです。ですが、予算の範囲内でそれが実現できるかどうかは今ここでは判断がつきません。私の知人に、働くことが難しいお子さんに理解のある不動産業者がいます。物件の説明は無料ですので、次回の面談でお話を聞いていただき、その後、実際に物件を購入するかどうかを検討してみるのはどうでしょうか」
「分かりました。ぜひ説明を聞いてみたいです」
雅彦さんはそう言い、母親も同意するように頷きました。
雅彦さん親子との面談後、筆者は不動産業者のT氏に事情を説明。雅彦さんのニーズに合うような物件を探してもらうよう依頼しました。
その後、T氏からよさそうな物件が見つかったとの連絡が入ったので、雅彦さんと2回目の面談を実施することになりました。
雅彦さん親子とT氏がそれぞれ自己紹介を終えた後、さっそくT氏は机の上に資料を並べていきました。
「今回ご紹介する物件は、こちらのリースバック物件になります」
すると雅彦さんは不思議そうな顔をしました。
「リースバック物件とはどのようなものなのでしょうか?」
「リースバック契約とは『不動産の所有者が自分の物件を売却したあと、家賃を払いながらその物件に住み続ける契約』をいいます。よくあるケースは『自宅を売却して現金を得た家主が、家賃を支払っている間は引き続き売却した自宅に住み続ける』といったものです。このような契約を結んだ物件をリースバック物件と呼びます。リースバック物件を購入することの主なメリットは次のようになります」
・すでに入居者(もともとの物件の持ち主)がいるので、募集費用やリフォーム費用がかからない
・物件を購入したら、購入者(雅彦さん)はすぐに家賃収入が得られる
・居住者はもともと自分の自宅だったので長く住むケースが多い。
つまり退去リスクが通常の賃貸物件に比べて低いことが多い。
・物件の修繕費用やリフォーム費用は家主が負担する。
つまり雅彦さんがそれらの費用を負担することはない。
・リースバック物件は市場価格よりも安く購入できる可能性が高い。
・仮に家主が退去した場合、その物件は売却をすることになるのだが、購入費用が安かった分、売却益を得られる可能性が高い。
メリットを確認した雅彦さんは首をかしげました。
「リースバック物件はなぜ安く買えるのでしょうか?」