どこもわるくないのに登校できない…

うつ病になると精神運動が抑制されて活動性が著しく低下するので、子どもはどこもわるくないのに登校できなくなることがあります。親御さんはお子さんの変化に戸惑うかもしれませんが、そんなときはお子さんが思春期の只中にいることを思い出してください。

思春期になると、子どもの体は急激に成長し、第二次性徴を迎えます。

心理的には親から離れてアイデンティティを確立しようともがく時期です。親に依存する一方、一個の人間として自立しようと子どもは葛藤しています。同時に自分の能力や外見、強みや弱みに気づき、ありのままの自分を受け入れると同時に自己肯定感も低下しがちです。

体も心も不安定なこの時期には、疲れたときに安心して休息できる場が必要です。とくに、すでに抑うつや不安に悩んだり、うつ病を患ったりしている子どもには、家庭に安息の場を整えてあげてください。

【図表5】とくに回復期にしてはいけないこと
出所=『思春期の子の「うつ」がよくわかる本』(大和出版)P89 イラスト すずきえりな

スモールステップを見逃さずにほめる

子どものうつ病への効果が認められている心理療法は、認知行動療法と対人関係療法です。ただし、心理療法にはある程度感情を客観的に認識して言葉にする力が必要なので、実際に行える症例は限られています。

認知行動療法とは、ものごとの受け止め方(認知)と行動に働きかけてストレスを軽減する方法です。対人関係療法は、ストレスの原因となる対人関係上の問題に着目して治療していく方法です。

とはいえ、こうした療法が行える医療機関は多くないので、一般的には環境をアセスメントし、具体的な環境調整の提案が行われています。

それでも改善しなければ、慎重に検討したうえで薬物療法を開始します。

また、自己肯定感が低下しているので、本人なりに努力しているところを探してほめるといった支持的心理療法も行います。「今日は5分散歩ができたね。がんばったね」など、本人なりの進歩を言葉にしてあげます。スモールステップを見逃さずほめることが大切です。

舩渡川智之『思春期の子の「うつ」がよくわかる本』(大和出版)
舩渡川智之『思春期の子の「うつ」がよくわかる本』(大和出版)

思春期は生活リズムが乱れやすいので、食事や睡眠が不規則にならないように一日、一週間のスケジュールをつくります。また、うつ病になると疲れすぎないように活動量も調整します。

重度のうつ病の場合、急性期には過度な刺激やストレスに注意します。

通学している場合は、学校の環境にも配慮が必要です。大音量や強すぎる光などの刺激は自律神経に大きな負荷をかけてしまいます。

また、授業の内容がわからなかったり間違った回答をしたりしたとき、本人の自己肯定感が下がらないように先生にも配慮してもらいます。