緊急性が高いときは入院や休学を勧めることも

抑うつや不安で受診したお子さんは、通常は外来で治療を行っていきますが、緊急性が高いと医師が判断すれば、入院や休学を勧めることもあります。

とくに緊急性が高いのは、自殺願望を強くもち、くり返し自傷をしたり自殺未遂を起こしたりしている患者さんです。摂食症が進行して栄養状態が悪化している患者さんも、ほうっておけば命の危険があるので早めの入院を勧めることがあります。

また、しばらく外来で治療を行ってもほとんど効果があらわれなかったり症状が悪化したりする場合や、家で療養していても日常生活に支障が出るような場合にも、「入院して治療してみてはどうですか?」と声をかけることがあります。

【図表2】【DSM-5-TR】でのうつ病の診断基準
出所=『思春期の子の「うつ」がよくわかる本』(大和出版)P83

うつ病は初期段階の対応が重要

成人期までを念頭に治療するうつ病は、初期の段階で気づいて適切な治療を行えば回復する病気です。思春期に発症したうつ病でも、初期段階が重要なのは同じです。

「ちょっとだるそうだな」「疲れやすいみたい」と思ったら、子どものことを注意深く観察してください。朝、起きられなくなったり、食事がとれなくなったりしたら、うつ病の初期症状も疑われます。早めに専門医を受診しましょう。

うつ病と診断されたら、とにかく休ませてあげることが大事です。この時期に無理をしたり、焦って登校させたりすると、こじらせて長期化してしまいます。小児から青年期のうつ病にはまだ薬物療法の安全性が確立していません。また、認知行動療法も、ある程度言語化能力が発達していないと効果が出ないので、治療では環境調整が優先されます。

【図表3】うつ病の病期と標準的な治療
出所=『思春期の子の「うつ」がよくわかる本』(大和出版)P86、87