首相が顔色をうかがう相手

生徒会に置き換えて見てみましょう。

ある学校の生徒会は、A君とB君とC君のグループに分かれています。A君のグループは7人、B君のグループは8人、C君のグループは10人です。

この学校の生徒会長は全生徒によって選ばれるアメリカ型ではなく、生徒会メンバーによって選ばれる日本型=議院内閣制型で、いまの生徒会長はA君グループ7人とB君グループ8人によって選ばれているとします。

もうこの状況を見るだけで、生徒会長が誰にいちばん気を遣うのかわかりますよね。

そうです。全生徒よりも、A君とB君の顔色ばかりうかがうことになるでしょう。これが日本政治のいちばんの問題点です。

派閥のボスが権力を振るう理由

ここでA君やB君が本当に全生徒のことを考えてくれていたらいいのですが、そうはいきません。自分のグループを維持するのに必死になります。

橋下徹『13歳からの政治の学校』(PHP新書)
橋下徹『13歳からの政治の学校』(PHP新書)

A君もB君も、学校が終われば近くのファストフード店でグループのメンバーと集まる。話していることは学校全体のことよりもどうでもいい話が中心。代金はA君、B君が出す。そのことによって、メンバーもボスであるA君とB君についていく。

A君はグループメンバーの一人から、体育祭の委員長になりたいとお願いされ、生徒会に掛け合う。B君は、グループメンバーの一人から、自分の所属するラグビー部の部室をもっとグラウンドに近いサッカー部の部室と入れ替えるように求められ、サッカー部と交渉する。また別のメンバーから「○○ちゃんと付き合いたいので間に入ってほしい」と頼まれ、○○ちゃんの自宅前で○○ちゃんが帰ってくるまで待つ。

A君、B君は日々涙ぐましい努力を重ねてグループを維持します。それはC君も同じでしょう。

そのうえで、A君、B君はいざというときに、生徒会長に自分の考えをぶつけて押し通すのです。

それが生徒全体の利益になるものか、自分やグループメンバーの利益のためだけなのかはごちゃまぜです。

このような生徒会が本当に生徒全体のことだけを考えて運営されると思いますか? そんなことはないですよね。

これが日本の「派閥政治」の実態です。A君、B君、C君こそが派閥のボスとして権力を振るう者であり、派閥政治は国民全体のことを考えてというよりも、極めて国会議員の内々の論理に基づいて行なわれてしまうのです。