厚生年金は「65歳から」になるまでに緩和措置があった

会社員・公務員は55歳、60歳、65歳と徐々に支給開始年齢が引き上げられてきた。その際、一度に支給開始年齢を上げたのではなく、少しずつ上げる緩和措置としての特別支給の老齢厚生年金が準備されていた。それゆえ、厚生年金保険の受給権者である元会社員・公務員の人たちは年金繰り上げをしなくとも、将来受け取るべき年金のいくらかの部分に相当する金額を60歳から65歳までの間に受け取ることができた。だから、年金が減額される年金繰り上げを行う切実性はあまりなかった。

ところが、自営業者・フリーランスは(専業主婦は会社員・公務員の妻である人が多いので立場が違うので省いておく)、国民年金の支給開始年齢が1961年の制定当初から65歳なので、もっと早くから受け取りたいときは損を承知で繰り上げざるを得なかったし、また、60歳からの繰り上げ制度も準備されていた。

これが、年金繰り上げにおける国民年金受給権者(自営業者・フリーランス)が25.7%と厚生年金受給権者(会社員・公務員)が0.7%という大きな違いの理由と考えて間違いなさそうだ。

年金手帳をチェックする女性
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なぜ、年金繰り上げをしたのか? その主な理由4つ

一方、個人がなぜ年金を繰り上げたかという理由をインターネット・ブログ・YouTubeなどで調べてみた。

それで分かったのは、冷静に年金受取額のメリデメ計算をして年金繰り上げを選んだ人は少なく、月単位、年単位の受給額が減るのはわかっているが、やはり「早くもらいたい」から年金繰り上げをしたという人が多いようだ。

現役時代の職業は、自営業者だけでなく、会社員の人もかなりいる。

年金繰り上げをした主な理由は次のとおりである。

①生活に困って早く年金をもらって生活の足しにしたい。
②60歳前に健康診断で問題点を指摘されたり、がんを宣告されたりして、長生きできるか自信が持てなくなり、年金繰り上げを決めた。
③年金を繰り上げた分を生活費に回し、60歳から働かずに老後を生きようと考えた。
④新NISAが開始されたので、年金を早くもらって、新NISAで運用して儲ければ、繰り上げの減額分は取り返せると思った。

これは、繰り上げた時点での理由のみで、その後まではわからない。読んだ限りの感想だが、「もらえるなら減っても早くもらいたい」というのが最大の動機のようだ。