まずは「即死しない」ための対策

家庭の防災において最優先で行うべき項目は「命を守る」対策です。非常食や飲料水の備蓄は重要ですが、大地震で建物がつぶれたり、洪水に巻きこまれて命を落としたりしてしまえば、備蓄品を食べる人はもういなくなります。

まず災害で即死しないための対策を行い、続いて命が助かった後の準備を行います。食料備蓄は、「普通の災害」から命を守ることを考えた際、「重要だが最優先ではない」準備であると言えるのです。備蓄の前に、大地震に備えた建物対策や、津波・洪水・噴火などの影響から避難するための準備を、確実に済ませることが優先です。

自宅で非常用バッグを準備する女性
写真=iStock.com/recep-bg
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「最低3日分・できれば7日分」と言われる理由

ところで、非常食や飲料水を備蓄する際の目安として、「最低3日分・できれば7日分」という期間が示されます。この2つの期間には、ある重要な意味が込められているのです。

大地震や大規模水害などが発生した際、警察・消防・自衛隊など「公助」の力は、まず人命救助に振り向けられます。

災害発生から3日が経過すると、要救助者の生存率が大きく低下するため、発災72時間は救助が最優先されるのです。

生存者に対する生活支援が本格化するのは、発災から4日目以降となります。災害発生から3日間については、外部からの支援なしで生活をする必要があるため、「最低3日分の備蓄品」を準備しましょうと言われているのです。

一方、近い将来の発生が想定されている「首都直下地震」や「南海トラフ地震」など、多人数または広範囲に影響をもたらす災害が発生した場合は、発災から4日が経過しても、十分な生活支援を始めることができない可能性があります。

そのため、目安として発災から最大1週間、外部からの支援なしで生活をすることになる可能性があり、「できれば7日分」を目安に備蓄をすることが求められています。

この、「最低3日・できれば7日」分の防災備蓄品があれば、災害の影響で「餓死」する恐れは低いといえます。また、準備が不十分であっても、餓死しそうな方がそのまま放置されるということは、日本においては考えづらいでしょう。

しかし、これは「普通の災害」における想定です。私たちが経験したことのないような大災害、あるいは過去に経験したが、すでに忘れられてしまった危機。想定外の状況に直面した場合は、「餓死」という死因が現実化する可能性もあります。それはどのような状況なのでしょうか。