1914年、帝大出の父親のシンガポール赴任中に生まれた

三淵嘉子は大正3年(1914)11月13日にイギリス領シンガポールで生まれている。名前に使われている「嘉」の一字も、シンガポールの漢字表記「新嘉坡」に由来する。

嘉子の父・武藤貞雄は東京帝国大学法科卒業のエリート。彼が勤務する台湾銀行は大正元年(1912)にシンガポール出張所を開設し、そこへ転勤を命じられて新妻のノブを伴い赴任していた。

貞雄は四国・丸亀の出身で、地元の名家・武藤家に入婿して一人娘のノブと結婚した。ノブもまた当主・武藤直言の実子ではない。彼女の実父は若くして亡くなり、6人の子だくさんだった一家は生活に窮してしまう。そのため末っ子だった彼女は、伯父の直言に養女として引き取られた。