睡眠時間が短くなるほど、学習力は低下していった

親として「他の子が遅くまで勉強しているなら、うちの子も同じ時間までやらせた方がいいのでは」と迷いが生じる気持ちもわかります。それでも生活の軸を常にぶれさせずに子どもと接しているうちに、次第に子ども自身の中にも軸ができ上がっていきます。

娘は小学6年生の時に中学受験をすることを決めましたが、「中学受験では塾に通う子が多い。夕方から8時頃まで勉強することになると思うけど、どうする?」とたずねたところ、「絶対無理!」という反応が返ってきました。幼い頃から早寝早起きを習慣にしてきた娘は、「受験はするけど、生活リズムを変えたくないから塾には通わない」という決断を自ら下しました。

また、高校時代には定期試験の前に普段より1時間短い「6.5時間睡眠」にチャレンジしたものの、3日で断念していました。私から見て特に異常はなかったのですが、本人は「やっぱり睡眠は8時間必要だね。6.5時間まで減らすとイライラしたり、集中力が下がったりする気がする」と言っていました。生活の軸を通して自分の体調をモニタリングし、受験に最適な心身を自らつくっていったのです。

ベッドで寝ているナイトキャップをかぶった少女
写真=iStock.com/Hakase_
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「試験までは毎日10時間以上勉強させること」

このように、娘は中学受験をしましたが学習塾に通うことはありませんでした。一番の理由は、本人が塾通いによる生活リズムの乱れを嫌ったことでしたが、もう一つの理由としては子どもが塾に通うことで、私が余計な不安を煽られたくなかったからです。

小学6年生の夏、娘の友達のお母さんから「いい塾があるから、一緒に通わせない?」と誘われ、物は試しと、地方都市から2時間かけて東京まで塾生以外も受けられるオープン模試を受けに行かせたことがあります。模試の終了時間に娘を迎えに行くと、「親御さんは、このあと少し残ってください」と先生からお話があり、そこからなんと1時間かけてお説教が始まりました。

「これから試験当日までは毎日10時間以上は勉強させること」「家でもできるだけ勉強時間をつくること。夜10時前に寝かせるなどもってのほか」など、そこでは私が考える脳育ての理論とは相反する内容が語られていました。先生方の話を聞いて焦るどころか、「これでは子どもたちがダメになるわけだ」と妙に納得してしまいました。

しかし、周りの保護者の方々はもう必死です。先生方の言葉に不安を煽られ、みるみるうちに表情は引きつり、心拍数が上がっていっているだろうことが手に取るようにわかりました。先生方は親御さんを不安にし、受験モードにさせるためにそうした話をしているわけですから、当然と言えば当然です。