※本稿は、加藤俊徳著『1万人の脳を見た名医が教える 好奇心脳』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
悩み多き中高年世代
脳のMRI(磁気共鳴画像法)から脳の診断・治療を行う私のクリニックには、連日のように、「今の自分」に不安や悩みを抱えた方が相談に来られます。その多くが40代後半を過ぎた中高年の方々です。
相談でもっとも多いのは、「もの忘れ」など脳の機能低下に関するものですが、実際の相談の内容は、心身に対する不安から生き方に関するものまで、非常に多岐にわたります。
一方、社会全体に目を向けると、今の日本には年間2万人以上の自殺者がいます。原因はさまざまだと思いますが、圧倒的に男性が多く、年齢階級別では50代が1位、次いで40代、70代、60代が続きます(「令和5年版自殺対策白書」厚生労働省)。
脳は人間のすべての「能力」をコントロールする司令塔で、「記憶力」などの「認知機能」だけでなく、人生そのものに関わってくるものです。年齢に関わらず、脳がしっかり働いて成長し続けることができれば、毎日が楽しくなり、あなたの人生も、思い描く理想の姿に限りなく近づいていくはずです。
「好奇心」がすっかり欠如した中高年
ではなぜ、今の中高年にはこれほどまでに、不安や悩みを抱える人が多いのでしょうか。
私は、脳内科医として、また脳科学者として、「来院者の脳が成長するクリニック」を目指して、これまで1万人以上を加藤式MRI脳画像診断法(脳相診断)で診断し、治療してきました。多くの患者さんと対話し、脳の状態や脳の得意・不得意を説明して、様々な悩みの解決方法を手ほどきしてきました。
そうした日々の積み重ねの中で、私は「脳の機能低下」や「老化」以前に、多くの方に共通する問題点を発見しました。それが、今回著わした『好奇心脳』のテーマである「失われた好奇心」の復活です。
私のクリニックを訪れる人の多くが、「これをしているときはワクワクする」とか「次はあれをやってみたい」という気持ちがない、つまり、物事に対する「好奇心」をなくしてしまっている。しかもそのことに本人がまったく気づいていないのです。