「右脳感情」は他人感情、「左脳感情」は自己感情

「好奇心」とは文字どおり、「珍しいものや、今まで出会ったことのない人や物に刺激を受けて、興味を持ち、探求しようとする心」です。

なぜ、中高年の多くが「好奇心の欠如」状態におちいっているのか。それは、その世代の人たちが、知らず知らずのうちに「自分の感情を閉じ込めてきた」からです。

もう少し、脳科学的に説明しましょう。

私は、一般の方々が脳のことをより理解しやすいように、脳の神経細胞の集合体を、機能ごとに、感情系、記憶系など8系統の「脳番地」に分類しています(「脳番地」の詳細については好奇心脳』第3章参照)。脳には右脳と左脳がありますが、8つの脳番地も左右それぞれに配置されています。

「右脳」は主に五感から取り入れた「非言語情報(イメージや感覚など言語化されていない情報)を処理する」役割、「左脳」は主に「言語処理を行う」役割を担っています。右脳でキャッチしたぼんやりとしたイメージが、左脳によって言語処理され、自分の感情(言葉)として表現されます。

「好奇心」に関係するのが、喜怒哀楽などの感情表現をする際に働く「感情系脳番地」です。

感情系脳番地では、「右脳感情系脳番地」は周りの空気を読む能力、「左脳感情系脳番地」は自分を表現する能力にそれぞれ関係しています。「右脳感情」は「他人感情」、「左脳感情」は「自己感情」と言い換えると、分かりやすいかもしれません。

空気は読めるけれど、「自分」がない…

MRI脳画像を診てみると、中高年の患者さんの多くが「右脳(他人)感情系脳番地」が発達している一方で、「左脳(自己)感情系脳番地」が育っていない、あるいは衰えてしまっていることがわかります。

「左脳(自己)感情」が発達しないまま、人生の後半を過ぎてしまっている――。「空気は読めるけれど、自分(の感情)がない」状態がずっと続いている人が多いということですね。

たとえば、高学歴のほうがいいとか、大企業に勤めたほうがいいというような考えは、社会がつくり出した「右脳感情」です。あなたは、これらの考えに付帯して、自分の人生を決めてこなかったでしょうか。

もちろん、社会に出て企業で働くなど、仕事をしていくうえでは、左脳感情を抑えつけ、右脳感情に付帯することは、ある意味避けられないことかもしれません。会社員にとっては、右脳感情(会社の方針や上司のやり方)に従うことによって、自分自身の成功(出世や高収入)が得られるからです。

中高年の多くが長きにわたり、無意識のうちに、左脳感情を抑えつけてきました。その結果、抑えつけてきたことさえ忘れて、自分でなにかをしたい、やってみたいという、左脳感情から生まれる「好奇心」を失ってしまっているのです。