二度の爆破予告

驚くのはこれだけではない。真理の丘に前代未聞の“大事件”が起こったのは2023年の春だ。柴山さんが打ち明ける。

「実は爆破予告があったんですよ」

柴山さんの話によれば、何者かが施設にメールで爆破予告をしたというのである。柴山さんが異変に気付いたのは、ある日突然、従業員用の出入り口の暗証番号が変わったことや、パトカーが施設周辺を見回りに来ているのを見たときだった。当時の上司に、何で暗証番号が変わったのかと聞くと、爆破予告がメールで届いていたことを渋々明かしたというのである。

「もちろん爆破されることはありませんでしたが、私のほうから聞かなければスタッフにもそうした事実を知らせようとしなかったんです。スタッフだけでなく、入居者さんやご家族には今も何も知らせていません。こんな大事なことを隠蔽しておくこと自体、異常だと思いませんか?」

その柴山さんの話を裏付けるように、前出の赤山さんがこう話す。

「ああ、爆破予告ですよね、はいはい」

意外にも冷静な反応だった。そしてこう続けたのである。

「私が聞いているだけでも、爆破予告は2回あったんです」

幸いにも大事件に至らなかったものの、仮に、何も知らない家族が施設を訪ねてきたときや、入居者が散歩に出かけたときなどに爆発が起きたらどうするつもりだったのか。死傷者を出したらどう責任を取るのか。富裕層が多く入居する高齢者施設だからこそより一層の警戒が必要なはずだ。

しかしその後、真理の丘が取った対応策について聞くと、危機管理意識が驚くほど低いことがわかる。

「対策っていっても、夜勤の人が窓をチェックする仕事が増えただけです。外から爆発物が投げ込まれんように、2時間おきに窓の外を見渡す仕事ですね」

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