警護の本質を示す「10分の1の法則」
小山内さんは、今回のトランプ氏銃撃でのシークレットサービスの警護を基本的に評価しつつ、警護の本質についてあらためて、こう話す。
「イスラエルで警護を学んでいた時に教官に『どんなに身体を鍛えようが、どんなに射撃の腕がよくなろうが、爆弾を抱えたテロリストが目の前に来てスイッチを押そうとしている状況でおまえができることなんか何一つない。爆破ボタンを押されたら死ぬぞ』と教えられたのです。
真の警護とは『どう戦うか』ではなく『どうしたらテロリストが近づいてこないようにするか、未然に防ぐか』ということに力を入れないといけないし、目の前に危険が発生してから守れるか守れないかは、もはや運でしかないんです。
運がよければ先に相手を倒すことができますが、運が悪かったら先に爆破ボタンを押されてしまう。ボディガードは運で仕事をしたらダメで『どうしたら確実に守れるか』ということを考え『未然にどう防いでいくか』ということを実践していかなくてはいけない。
警護の世界には『10分の1の法則』という言葉があります。準備をしていなければ、10回襲撃される可能性がある時に1回ぐらいしか守れないので、相手には9回アドバンテージがあるという意味が1つ。優秀なボディガードは10回起こりうる脅威を9回は未然に防ぎ、防ぎきれずに起きてしまった最後の1回もちゃんと守る。
10回襲われた時に10回すべてを守ることは不可能です。最後の1回に身体を張ることになるかもしれないけれども9回はしっかりと未然に防ぐというのが、警護の本質なのです」
シークレットサービスにより、発生時と事後で高度な警護が実践されていたからこそ、トランプ氏は命をつなぐことができたと考えることができるのだ。