日本の800mはレベルが低迷

久保と落合が日本選手権で“高校生V”を達成できたのは、シニア選手のレベルが高くなかったという面も否めない。なぜシニア選手が苦戦しているのか。理由のひとつにシューズの進化があるのかもしれない。

ランニングトラック
写真=iStock.com/VictorHuang
※写真はイメージです

男子800mの元日本記録保持者でロンドン五輪の出場経験を持つ横田真人(TWO LAPS代表)がこんなことを話していた。

「厚底スパイクが世界の主流になっても、800mはそんなに記録が伸びていなかった。でも今季は一気に突き抜けた感覚がありますね。それは走りのなかにシューズを落とし込むのに、800mは結構時間かかる種目だったのかなと思います。反対に現在の高校生は、ある程度、速くなったときから厚底スパイクを履いている。僕らみたいに頭のなかを切り替える瞬間がなかったと見ています」

実際に800mの世界リストを調べてみると、女子の1分台は昨年が59人。今年はすでに74人がマークしている。男子の1分45秒切りは昨年48人だったが、今年はすでに63人と急増しているのだ。

2020年頃から主流になりつつあった厚底スパイクは従来のものと比べて、クッション性と反発力がある。そのシューズを海外勢はしっかりと履きこなしたが、日本のシニア選手はそれができなかったようだ。

日本選手権で優勝した落合と久保のタイムは今季の世界リストで129位と68位タイになる。日本では素晴らしいタイムだが、世界基準でいうと決して上位とはいえない。