「寝る暇があったら仕事の勉強をしろ、ゴミ」

企業としての在り方自体が問われる内容ですが、極限状態にまで追い込まれた社員が退職を申告することは困難であることは想像に難くありません。退職代行モームリでは毎日の依頼件数とともに、その日にあった依頼者個別の事例を公開しています。以下に事例の一部を紹介します。

・「お前は人間ではない。寝る暇があったら仕事の勉強をしろ、ゴミ」などと罵倒される
・おこなった業務に対して「仕事をナメてるの? 縛り付けたほうがいいのか」など恐喝を受けた
・「座っているだけで給料をもらえると思うなよ」と言われた
・「退職代行なんてゴミのような人間が使うものだ」と言われた

働き方改革が進められている令和の時代ですが、コンプライアンスやハラスメントの対策が不十分な会社は、残念ながらいまだに存在します。そういった会社は零細企業に多い傾向にありますが、大企業であっても支社や支店にパワハラ気質の人が所属することで、職場にハラスメントが横行する現場にもなります。

最高齢は71歳、辞めたいのに引き留められ…

退職代行モームリの利用者のうち、およそ7割は20代から30代。全体の15パーセントは新入社員からの依頼です。ハラスメントを受けやすい立場の弱い若い社員が、過酷な状況から助けを求めていることが推測できます。

一方で、高齢者であっても退職代行サービスに頼らざるを得ないケースもあります。「最高齢で71歳の方がいらっしゃいました。定年の65歳まで働かれたのですが、その方は仕事ができるので教育者としてアルバイトをされていたそうです。

ですが、やはり体力的にしんどくなってしまって退職を伝えたところ、『もうちょっといてほしい』とずっと引き留められたそうなんですね」と谷本さん。会社に恩がある依頼者は、きちんとした退職のプロセスを踏みたいために、退職代行サービスを利用したそうです。

何らかの理由で自らの意思を伝えることが難しい人にとって、代行業は重要なサービスと言えます。何も手続きを踏まずに会社を離れてしまうと、企業は大きな痛手を負います。退職代行モームリの場合、会社からの保険証や貸与物の返却はきちんとおこない、可能な限り業務の引継ぎをおこなうよう退職者に勧めています。

後藤記者は「先ほどの71歳の方のように、会社に恩がある状態でも『できるだけいい形で辞めたい』という考えのなかで、思いがなかなか伝えられない人の依頼もあります。ただ、こういった例は少数です」と述べます。退職代行サービス利用に至った理由の多くは、ハラスメントであったり、入社前に受けた説明とは異なる労働条件だったりと、苦しい状況に置かれた人が助けを求めるケースです。