東大の女子学生比率は約30年ほぼ変わっていない

ところが、「○○女子短大」は最近はどんどんなくなったり、4年制大学に移ったりしています。それによって、ある程度はギャップが縮まっていくとは思われます。

西田亮介、安田洋祐『日本の未来、本当に大丈夫なんですか会議 経済学×社会学で社会課題を解決する』(日本実業出版社)
西田亮介、安田洋祐『日本の未来、本当に大丈夫なんですか会議 経済学×社会学で社会課題を解決する』(日本実業出版社)

なので、日本に固有とまではいえないかもしれませんが、女性だけもっぱら2年制の大学に行っていたというのが、ほかの先進諸国との違いを生み出している大きな要因かもしれません。

しかし、一番大きいのはやはり、大学を出たあとの年収であったり結婚の機会であったり、リターンの期待値(期待リターン)が男女間でだいぶ違うところでしょう。実際に、たとえば東京大学の女子学生比率はいまだにすごく低い状況です。20%ぐらいで、ぼくが学生の頃からほとんど改善していません。

これって結局「炭鉱のカナリア」みたいな形で、どのくらい女性の社会活躍が真に進んでいるかを見る、とてもすぐれた物差しではないでしょうか。

なぜかというと、中学や高校の段階では男女間での基礎学力にほとんど差はありません。むしろ女性のほうが優秀だったりするわけです。

にもかかわらず、大学入試を経て、東大などの難関大に入学する学生のジェンダーギャップがこれだけあるのは能力の問題ではなくて、どれぐらい時間やコストを大学進学に投資するか、という投資インセンティブの違いが如実に出ているからです。

周囲の大人のジェンダー観が影響を及ぼしている

何がその投資量の違いを生むかというと、大学を出たあとの期待リターンや、家族や教員などまわりの大人たちからの影響ですよね、普通に考えると。

ご家庭、親御さんが子どもの進学についてどう考えるか、ジェンダーによる価値観の違いのようなものが現れています。

本人の能力とは関係なく、社会の女性活躍の度合いと周りが期待するジェンダー観みたいなものが影響しているからこそ、本人の投資行動が変わってくるわけです。

それを測るのに、やはり東大の女子学生の比率は優れた代理変数ではないでしょうか。

この数字が改善してないということは、表面上就労率が上がったり、女性でも中間管理職以上に進む人がある程度増えていたりしても、やっぱりいまだに水面下ではジェンダーギャップが残っているということです。足元で、優秀な女子高校生たちの行動が変わっていないわけですからね。

【西田】
期待リターンと親などの制約条件のどちらが効いているかも興味深いです。東大を出てからの行き先はほかの場合と比べてジェンダーギャップがかなり少ないはずなので、期待リターンは男性も女性も変わらないのでは? だとすると期待リターンの違いよりも、社会のジェンダーを巡るさまざまな偏見、差別意識、規範感情などが関係している気もします。