3度のがん

これまで下島さんは、3度がんになっている。

1度目は11年前。1回目の結婚が破綻した翌年、37歳のときに直腸がんが見つかった。

直腸がんの3Dイメージ
写真=iStock.com/libre de droit
※写真はイメージです

当時販売員の仕事をしていた下島さんは、下血、腹痛、下痢に気付いていた。「下血、腹痛、下痢」でインターネット検索すると「大腸がん」と出てくる。怖くて仕方がない反面、「病院へ行くお金もないし、この年齢で自覚症状が出たら末期だよね。手遅れだと手術もできないはず」と自己判断し、数カ月放置した。

しかし日に日に身体がしんどくなり、立っているのもやっとな状態で、ついに受診する。

結果、緊急入院という最悪の事態となった。

身体のしんどさは、「下血と子宮内膜症による重症の貧血」だった。医師は、「男性なら立っていられない数値」と言い、「直腸がん」と診断。

その後、さまざまな検査を経て手術が決まったが、「リンパ節に転移している」「人工肛門になるかもしれない」と言われた時下島さんは、「あ、完全に終わった」と思った。

手術は、直腸とリンパ節13カ所、腸との癒着が酷かったため子宮全摘、片側の卵巣摘出となり、ステージ3a。人工肛門はまぬがれた。

「リンパ節は見える所は全部取り切れたこと、がんが腹膜まで飛び出してなかったこと。これが今も生きていられる理由だと思われます」

その後半年間、点滴での抗がん剤治療を受けた後、飲み薬に切り替え、合計3年間抗がん剤治療を受けた。抗がん剤治療の間、病院まで送迎してくれていたのは父親だった。

「吐き気が起こることを心配して、率先して車を出してくれたんです。検査の度に弱気になる私に父は、『大丈夫だ。なんとかなる。心配するな』と言葉をかけ続けてくれました。総額40万円近くする健康食品を買ってくれたり、入院中に見舞いに来て、『病院は夜が嫌だろ? 俺も精神科に入院してたとき静かで、いろいろ考えてしまうのが嫌だった。それが分かるから切ない』なんて言っていました。父なりに私に愛情を持っていてくれたと気づかされた時期でもありました」

2度目は15年後の2018年。52歳のときに乳がんが見つかる。

両親の介護のさなか、左乳房にチクチクという痛みがあり、乳腺外来を受診すると、乳がんと判明。全摘手術を受け、現在もホルモン剤を飲んでいるが、昨年5年目をクリアし、転移や再発の危険はないと言われている。

3度めは2022年。55歳のときに、今度は上行結腸がんが見つかる。

両親の介護が始まってから、37歳のときに受けた直腸がんの術後の検査になかなか行けず、間が空いてしまっていた。大腸カメラの検査は時間がかかるため、介護や育児のキーパーソンにはハードルが高いのだ。

ようやく検査を受けに行ったときには、その場で取れない大きさのポリープが見つかり、結局入院して内視鏡手術を受けることに。

「がんの告知は何度受けてもしんどいです。体質かなと思うので、初期のうちに見つけるしかないですね……」

ポリープはがん化していたが、取って終わりとなり、今後は2年毎に検査を受けることを勧められた。