自民ナンバー2・茂木氏「岸田に解散総選挙はさせない」

こうした中で、岸田首相による早期解散の思惑が崩れるよう追い込んだのが、自民党ナンバー2の茂木敏充幹事長だと言われている。

茂木氏は近ごろ、周囲に「岸田じゃ選挙は戦えない」「岸田に解散総選挙はさせない」などと吹聴するようになっていた。

しかも、岸田首相が連敗を重ねる原因となった静岡県知事選で、自民党静岡県連が推してきた候補者の党本部推薦を強く進めたのも茂木氏だった。

静岡県知事選では立憲や国民民主党が推薦した元浜松市長の鈴木康友氏の優勢が事前の情勢調査などでも明らかになっていたため、自民は党本部推薦を見送って静観する説も浮上していたのだが、茂木氏はそれをかき消したわけだ。

自民党関係者は「知事選に勝てる見込みがあったというよりも、岸田首相が連敗を重ねても構わないという気持ちが強かったのではないか」と語る。

案の定、6月に入ってマスコミ各社は岸田首相が早期の衆院解散を見送ったと報じた。

岸田首相は低支持率のまま総裁選に突っ込んでいくことになり窮地に立たされている。

茂木氏はかねてより総理総裁を目指すことを公言しているため、その座を奪い取ろうという思惑も透けて見える。

自民党ナンバー2の茂木敏充幹事長
自民党ナンバー2の茂木敏充幹事長。岸田首相による早期解散の思惑が崩れるよう追い込んだと言われている(写真=Estonian Foreign Ministry/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

蓮舫氏が都知事選出馬を決断した背景

こうした政局が巡り巡って影響を与えたのが、蓮舫氏の都知事選出馬だ。

蓮舫氏はこれまでも都知事選が開催されるたびに擁立論が浮上していたが、出馬するためには参院議員を辞職する必要があることが、決断しきれないボトルネックになっていた。

国会議員を辞めて挑んだ都知事選で敗れることになれば、一時的であっても「ただの人」になりかねない。

そのため、都知事選出馬に向けた蓮舫氏への説得にあたっては、選挙で敗れた後の対応もセットになって考えられていた。

そこで重要になってくるのが解散総選挙の日程である。

岸田首相が早期解散を断念し、都知事選よりも後に衆院選があるということになれば、蓮舫氏は都知事選で敗れたとしても衆院鞍替えが可能となる。

早いうちに国会議員として復活することができれば、その影響力も保ち続けることができるだろう。

筆者は昨年8月、プレジデントオンラインに「立憲民主党の離党ドミノはこのままだと止まらない…離党を決断した現職議員にある2つの共通点」という記事を寄稿した。その中で、蓮舫氏が衆院鞍替えする候補地として新東京26区が挙がっており、その公認候補を巡るいざこざで松原仁衆院議員が立憲民主党を離党したことを詳報しているが、ついにこの想定が現実になりつつあるということだ。