立憲が先頭に立つことで「ひ弱な野党連合」を脱する

とは言うものの、これは立憲にとってリスクでもある。現職に圧倒的に有利で、新人候補は相当厳しい戦いを強いられる都知事選。蓮舫氏が敗れれば、4月の衆院3補選に全勝し、5月26日の静岡県知事選にも勝利したここまでの勢いに水を差しかねない。

だが、蓮舫氏と立憲は、そのリスクを取った。立憲が事実上「選挙戦の先頭に立つ」姿を演出したことで、ようやく「勝ち筋」が見えてきたのだと、筆者は考える。

野党勢力が結集して事実上「1対1」の選挙戦に臨む時、従来のように外部の団体が大小の野党を平等にまとめる(いわゆる「野党共闘」と呼ばれる)形の結集は、その輪の外にいる一般の有権者からは、中核がぼやけた「ひ弱な野党連合」のようにしか見えないため、「構え」に力強さが生まれない。

「多弱連合」を脱し、立憲が野党の中核として、自らが責任を持って「勝ちに行く」姿勢を見せた上で、さらにそれぞれの中小野党や市民団体などが、ほどよい距離感を保ちつつゆるやかに「大きな構え」をつくる方が、陣営の求心力を高め、勝利につながりやすいと考える。

結果次第では衆院選にも良い影響を与える

それに立憲は今、相次ぐ選挙の勝利で「上げ潮」状態にある。立憲が前面に出た方が「勝ちやすい」空気が生まれつつある。その意味で「立憲ど真ん中」の蓮舫氏は、まさにうってつけの候補だ。中核政党たる立憲が「構え」の中で一歩前に出た上で、立憲だけでは固め切れない野党支持層や小池氏に批判的な無党派層の支持を、他の中小野党や各種支援団体がウイングを広げて拾い上げていく、そんな形を構築すべきだろう。

こうした考え方は、中小野党や市民団体には納得がいかないかもしれない。だが、この「中核をはっきりさせる戦い」への意識を共有できるか否かが、都知事選の帰趨を左右すると思う。この戦い方で一定の成果を上げることができれば、近く行われるだろう衆院選での野党間協力にも応用が利き、個々の小選挙区にも一定程度のよい影響を与えるのではないか。

都庁
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