日本のプロ野球の監督は「客寄せパンダ」

その多くは引退後、スカウトやマイナーリーグのコーチや監督を経て、その能力が評価されてようやくMLBで采配を執っている。MLBでは指導者の世界にも厳しい競争があるのだ。

これに対し、NPBはほとんどが「現役時代からよく知っている有名選手」ばかりだ。

MLBと同様にセ・パ両リーグの監督の現役時代の実績を並べるとこうなる。

【セントラル・リーグ】
阪神/岡田彰布/1520安247本(8)
広島/新井貴浩/2203安319本(8)
DeNA/三浦大輔/172勝0セーブ(6)
巨人/阿部慎之助/2132安406本(13)
ヤクルト/髙津臣吾/36勝286セーブ(6)
中日/立浪和義/2480安171本(11)

【パシフィック・リーグ】
オリックス/中嶋聡/804安55本(6)
ロッテ/吉井理人/89勝62セーブ(5)
ソフトバンク/小久保裕紀/2041安413本(11)
楽天/今江敏晃/1682安108本(3)
西武/渡辺久信/125勝27セーブ(6)
日本ハム/新庄剛志/1309安205本(7)

※5月26日、西武は松井稼頭央監督(2090安201本オールスター出場9回)の休養を発表。渡辺久信GMが兼務のまま監督代行になった。

12球団の監督全員が、現役時代は立派な成績を残してオールスターにも3回以上出場している。コーチから監督に昇格したケースが大部分だが、中日の立浪監督、日本ハムの新庄監督は、コーチの経験さえなくいきなり監督になっている。

日本では、監督の知名度、スター性で観客を呼ぶという部分がある。

1993年2月の春季キャンプ、巨人の監督に復帰した長嶋茂雄がウィンドブレーカーを脱いで「背番号33」のユニフォームを見せたときは、報道陣が殺到し、翌日のスポーツ全紙が一面トップにでかでかとその写真を掲載した。

スター選手は引退してもファンの心に強く残っている。言葉は悪いが、興行であるプロ野球にとってスター監督は「客寄せパンダ」的な存在でもあるのだ。

野球のコーチ
写真=iStock.com/BeauSnyder
※写真はイメージです

監督はあがりのポジション

MLBで「客寄せパンダ」的な監督がいないのは、スター選手がFAなどで頻繁に移籍することもあるが、同時に監督(Manager)は、マネジメントのプロとして雇われているのであり、客寄せは選手の役割と割り切っている部分がある。

さらに、NPBの場合「親会社の文化」が影響しているとみることもできる。

日本のプロ野球は広島を除く11球団が親会社を持っている。いずれも日本を代表する大企業だが、日本企業では「営業、技術職などの現場で活躍した若手社員が出世して管理職、さらには経営者になる」のが一般的だ。

現場で頑張った社員が論功行賞的に管理職になり、経営者になる。その日本的な慣習がプロ野球でも下敷きになって、「スター選手から監督へ」という流れができているのかもしれない。

しかし、物を売るのが上手な社員や優秀な技術者が、管理職としても優秀で、部下や組織をマネジメントできるとは限らない。日本経済の停滞の一因に、硬直した人事体制があるのは多くの方が指摘する通りだ。