中身のわからないものには投資しない

⑤シンプルである

成功のカギの5つ目は、投資商品そのものが「シンプルでわかりやすい」ことである。

複雑な投資手法は、複雑であるがゆえに長く続けることが難しい。また、中身がわかりにくい複雑な金融商品は、当初想定した前提条件が崩れたときに、大きなマイナスを被るリスクが高い。サブプライムローン問題を発端としたリーマン・ショックがいい例だ。

「証券会社の営業マンにすすめられて買ったけど大損した。説明にもこないから、中身がまったくわからない」

投資で失敗した人からよく聞く言葉だ。気持ちはわからなくはないが、中身をよくわからずに投資をしたあなたの責任だ。すすめられるがままに、いろいろな投資商品に手を出すのは、あなた自身の資産管理が複雑になるのでご法度だ。

「シンプルさは成功の要」、自分が理解できないものには手を出さないことだ。

投資に株価の予測は必要ない

⑥予測しない

6つ目のカギは、意外に思うかもしれないが「予測しない」ことだ。もう少し正確にいえば、「予測に左右されない投資の枠組みをつくる」ことだ。

「経済や金融市場の先行きを予測して、お金を増やすのではないのか?」と疑問に思う人もいるだろう。逆だ。実際のところ、社会情勢や経済情勢がグローバルに複雑に影響し合う状況下で、さまざまな出来事の発生可能性やその程度を予測し、なおかつ金融市場がどのように反応するかを的中させることは、専門家であっても至難のわざだ。

つまり、一貫して投資を継続するリスクに比べ、「的中する可能性の低い予測に賭けること」のリスクの方がはるかに大きい。

世界的に著名な投資信託の運用者であるピーター・リンチ氏の言葉に、次のようなものがある。「株価が下がり、半分になったくらいで売ってしまうなら、最初から売買などしない方がよい。何があっても持ち続けることだ。株価が大幅に下がるというのは、めったにない投資のチャンスなのだ」

将来性のある会社の株価が一時的に値下がりしたときは、「投資の機会としてとらえる」ことの重要性を語った言葉だ。実態としての企業価値やその将来価値に着目して投資するのであれば、短期的な株価変動は予測しなくてもよい、という意味であろう。

将来性のある「いい会社」の株式に投資する場合、経営努力によって会社は成長し、財務価値や株式価値は高まり、それに連動して株価も上昇することが見込まれる。そうした「実態としての価値」が高まる傾向にある投資対象資産にお金を振り向ける場合、値下がりを恐れるのではなく、むしろ値上がりのタイミングを逃さないことが重要となるのだ。

未来的なHUDインターフェース、KPIとBI、技術、データを使用している人
写真=iStock.com/NicoElNino
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NYダウ平均株価を例に、上昇タイミングを逃すことのリスクについて考えてみよう。同指数は過去100年間で約500倍、利回りに換算すると年平均+6.3%になる。しかし、値上がり上位10日間を除くと利回りは5.2%となり、さらに上位30日を除くと3.6%にまで低下する。このように、値上がりのタイミングを逃すことは、投資において、かなりの痛手になる。

しかし、ここで直面する悩ましい問題は、値上がりのタイミングをはかること自体が至難の業である、ということだ。それを解決する方法が、「予測せずに投資し続けること」なのだ。