明治のベンチャー

旧北上川河口、石ノ森萬画館を背景に。左から齊藤啓太さん、松本一馬さん、沼津明日香さん、庄司太樹さん、沼倉寛人さん。

ソフトバンクのCMに登場する「お父さん」の声を演じる北大路欣也。11歳の孫正義少年が見たであろう1968(昭和43)年のNHK大河ドラマ「竜馬がゆく」の主役だが、北大路は東北にも縁がある。1977(昭和52)年、孫正義がUCバークレーの3年生に編入した年、北大路は東宝の大作映画「八甲田山」に出演。そして同じ年、同じ新田次郎原作の「アラスカ物語」(東宝)の主演を務めている。主人公のフランク安田は明治元年生まれ。若くしてアメリカに渡り、困窮するアラスカエスキモーを率いてビーバーの毛皮事業を成功させた明治の起業家である。

そのフランク安田の出身地が、宮城県の港町、石巻市だ。

石巻は、江戸時代に北上川の水運と江戸・大坂を繋ぐ交通の要衝として発展した。岩手県盛岡市のさらに北に源流を持つ北上川は総延長249キロメートル。東北で最も長く、日本でも4番目に長い川だ。今、石巻の市街地を曲がりながら流れ、石巻湾に注ぐ川の名は「旧北上川」。1934(昭和9)年に内務省が大規模な治水工事を完成させ、上流の登米(とめ)で川を東に曲げ「新北上川」が生まれた。新北上川は大川小学校の横を走り、三陸海岸の追波湾へと流れている。大川小は、以前は河北町という名の町の学校だった。

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宮城県石巻市の位置。

石巻市は「平成の大合併」によって現在の姿になった。旧石巻市と、内陸の河南(かなん)町と桃生(ものう)町、三陸海岸に面した北上町、河北町、雄勝(おがつ)町、そして半島の町・牡鹿町が合併した。合併時の人口は約17万5000人。現在は約15万2000人だが、この中には、住所変更をせずに市外に避難した人や行方不明者の数も含まれる。

宮城県石巻市は、震災で3255人の人命を失った。津波は旧北上川を8キロメートル、新北上川では15キロメートルも遡った。震災後の関連死は230人。今も458人が行方不明のままだ。

この街で「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」に参加した5人に会った。最初に話を聞かせてくれたのは、高校ではなく高等専門学校に通う3年生だ。