偶然の出会いから一歩進んで、メンテナンスの努力を

昔は年賀状や暑中見舞いが、そうしたつながりを保つ手段でしたが、いまはメールやSNSなど、いろいろな手段でつながることができます。ただ私は、オンラインでつながるだけで満足せず、たまには直接会うことも必要だと思います。

ともあれ、出会った人とのつながりを続けていけば、単なる幼馴染みや同僚が大事な友人になっていきます。

そうした友人の何人かが、できれば「人生の伴走者」になってほしいものです。お互いが別々に生活していても、動向は把握している。何もかも理解しているほどではないが、互いに好意を持っていて、頼まれれば助け合う……。

こうした友人を大事にしていきたいものです。そのためには偶然の出会いから一歩進んで、メンテナンスの努力が必要になります。

メンテナンスとは、一方的にどちらかだけが助けてもらうのではなく、できることでお返しをして、互いに感謝を伝えることです。

縁があって出会った友人のなかで、いろいろなことを教えてくれる人、いい人を紹介してくれる人、仕事で協力してくれる人、よい医者や病院を紹介してくれる人……つながりは、そうしたやりとりのなかで深まっていくのです。

ではどうしたら、そんな「人生の宝」といえる友人に恵まれるのでしょうか。

それは、自分がしてほしいことを相手にする利他的行動がカギです。たとえば、相手の役に立つことを教える、相手の長所を褒める、相手の成功や幸福をよろこぶ、相手の行動に感謝する……。

新しい環境に身を置き、友情を育む

先ほど「褒めることが大事」と述べました。現代の日本人は、全体として自己肯定感が低い傾向がありますが、自己肯定感を高めるには人に与えること、感謝することが有効だといわれています。

私の経験からも、友人から感謝されたり、自分の善意や努力を認めてくれたり、自分の能力を高く評価してくれる友人がいたら、自己肯定感は高まり幸福になります。

友情は、自分が友人のよいところを発見してそれを伝え、頑張っているのを応援することで育まれます。褒めれば相手もよろこびますが、よろこぶ相手を見ている自分自身もうれしく、幸せになります。

つまり「利他の原理」が働くのですが、利他的に行動するのが友人を得る秘訣です。そうした友人のなかから、生涯の親友ができるかもしれません。

人生で友情を培った大事な友人も、高齢期になると亡くなったり、病気などで交流できなくなったりしていきます。これはとても悲しいことです。

年を取ったら友人、とくに親友は少なくなり、新しい友人はできないからさびしくなるだけだと思い込んでいる人も多くいます。

でも心がけしだいで、年を取っても新たな出会いに恵まれます。といってもいきなり友人、親友との出会いを期待するのではなく、新しい知り合いを増やし、そのなかから友情を育んでいけばよいのです。

そうした新しい出会いに恵まれるには、若いときや壮年期もそうですが、新しい環境に身を置くことです。

スマートフォンで一緒に写真を見る3人のシニア女性
写真=iStock.com/RichVintage
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