世界のインフレは2024年以降、さらに加速

【ロジャーズ】私は、2024年以降の世界経済について、とてつもなく大きな経済的問題が出てくるだろうと予測しているわけですが、その根拠の一つは世界中に不満を抱えている人が数多くいることです。さまざまなニュースを見ている限り、それは明らかです。

不満を持つ人は今後も増えていくでしょう。この問題をいかに早く解決するかが、中銀や政治家にとっての難題です。手っ取り早く解決する唯一の方法は、借金をし続けて、国民にお金をバラまくことです。それによって問題は一時的に解決するかもしれませんが、どこかで効果がなくなります。その後はとても大きな痛みを伴うでしょう。そして、世界各国は経済面で大きな衰退を見せるはずです。2025~27年には、世界各国にとても不幸な国民があふれると予測しています。

【渡邉】コロナショックでお金を刷りすぎたため、世界の多くの国は現在、資金の回収に入っています。2024年以降は、その影響でインフレが続き、ジムさんが言うように大きな痛みと経済衰退が訪れると思います。

先ほども言いましたが、その中で私がいちばん心配しているのは日本の状況なのです。日本でもインフレが進んでいますから、長く低金利を維持することはできないでしょう。しかし、今以上に金利を上げれば、日銀が債務超過に陥ります。つまり、日本は国家予算を組めなくなってしまうのです。

私は、2024年は世界全体が苦しみ、25年には日本がきっかけとなって、大きな世界経済ショックが起きるのではないかと心配しています。日銀の債務超過や日本の国債の格付けの低下などが、大きな引き金になるのではないかと思っているのです。

世界的投資家のジム・ロジャーズ氏とワタミ会長兼社長CEOの渡邊美樹氏
撮影=Takao Hara(Luxpho)

【ロジャーズ】私も、2024年以降に大きな経済危機が起こると考えていますが、タイミングが唯一の相違点です。まずは小さい国や、小さい企業の破綻がきっかけになるのではないかと思っています。どこかで小さな問題が起きたとき、世界中の人は「大したことはない」と言います。しかし、それから数週間後、数カ月後に、その「大したことない」ことが引き金となって、大きな世界経済危機をもたらします。しかし、その小さな問題がどこからはじまるかは、私にもわかりません。

渡邉会長が言うように、仮に日本がショックの発端になると、非常に大きな世界的危機につながるでしょう。しかし私は、日本が発端になる可能性は低いと考えています。

問題の発端は日本ではなく、ヨーロッパやアメリカになる可能性が高いでしょう。ただし、万が一、日本が引き金となった場合、それはとてつもなく大きなグローバル危機につながることは明らかです。