公明党に存在した小池待望論
ところが、小池知事は乙武氏を公認せず、無所属で出馬させた。乙武氏は小池氏との二連ポスターに囲まれて出馬会見しながら、なぜ無所属なのかという批判がネット上で噴出。自民党内でも「小池知事はなぜ半身なのか。本気で乙武氏を応援する気があるのか」という不信感が広がった。
さらに誤算だったのは、公明党が乙武氏の過去の女性問題を理由に推薦に慎重な姿勢に転じたことだ。組織選挙を支える創価学会婦人部(現在は女性部)に反発が強いという理由を自民党に伝えたが、本当の理由は別にあるのではないかと私はみている。
公明党は岸田政権を支える麻生太郎副総裁や茂木幹事長と折り合いが悪い。不人気の岸田首相が6月解散を断行することにも反対で、9月の総裁選で首相を差し替え、新政権誕生後にただちに総選挙を行うよう求めてきた。
公明党と都政で緊密な関係にある小池知事が東京15区補選に電撃出馬して国政復帰し、自民党に復党して9月の総裁選で勝利し、小池政権誕生後にただちに解散総選挙を断行するのがベストシナリオだったのだ。小池知事自身も7月の都知事選に出馬するかどうかを明言せず、4月の補選出馬に含みをみせていたため、公明党では小池待望論が膨らんでいたのである。
補選全敗・6月解散見送りで「岸田おろし」が始動
小池知事が補選出馬を見送り、代わりに乙武氏を擁立したことは、公明党を落胆させた。しかも乙武氏を無所属で出馬させたことに不信感を募らせた。
小池知事から十分な根回しを受けていなかったのだろう。小池知事が出馬しないのなら、過去の女性問題で婦人部に反発が強い乙武氏を無理に応援するメリットはない。むしろ公明党が3補選をサボタージュして岸田政権を全敗させ、6月解散の芽を摘むほうがよい。
公明党は岸田政権で非主流派に甘んじている菅義偉前首相や二階俊博元幹事長と密接な関係を築いている。岸田首相・麻生副総裁・茂木幹事長の現執行部に協力する義理はない。乙武氏の推薦見送りを決める際にも、菅氏や二階氏と入念なすり合わせをしたことだろう。菅氏や二階氏にとっても補選全敗は「岸田おろし」を仕掛ける契機となり、都合がよい。
再燃した小池氏の学歴詐称疑惑の影響
トドメは『文藝春秋』が9日に報じた小池知事元側近の爆弾告発だった。
4年前の都知事選目前、小池知事が「カイロ大卒」の学歴を詐称しているという疑惑が浮上したが、カイロ大が卒業を認める声明文がエジプト大使館のフェイスブックで公開されて疑惑は沈静化し、小池知事は再選を果たしていた。ところがこの声明文は、実は元側近が発案し、小池知事に近い元ジャーナリストが作成して、最終的には小池知事がエジプト政府側へ渡していたと暴露したのである。