EVシフトだけではCO2は減らせない

日本がカーボンニュートラルを宣言したのは、2020年の10月である。経済産業省が、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定し、産業政策・エネルギー政策の両面から、成長が期待される14の重要分野について実行計画を策定し、国として高い目標を掲げ、EV対応を後押しするべく、「攻めの業態転換・事業再構築」を支援している。

EVシフトの議論に熱気を帯びはじめたのは、自工会が急速なEVシフトは自動車関連産業の550万人の雇用に影響が出ると警鐘を鳴らした時からだろう。2030年のNDC(国が決定する貢献)中間目標は、GHG(地球温暖化ガス)全体で2013年比46%削減を目指している。

自動車産業の専門家によれば、EV販売を加速してもサプライチェーン全体のCO2削減には寄与せず、むしろエネルギーコストが車両価格に跳ね返ってきてしまい、産業の競争力が落ちてしまう。対応すべきは、物流の効率化と車両のEV化であるとの回答であった。

また日本はエネルギー調達力と原材料調達力に問題を抱えており、日本固有のカーボンニュートラル方法を模索しているとも付け加えた。日本におけるカーボンニュートラルの実現には、電力産業の脱炭素が大前提になろう。

テスラやBYDにはないトヨタの強み

その上で、エコシステム全体の脱炭素を実現していかなければならない。車両製造や車両走行時のCO2排出削減だけでなく、人々の行動変容を伴った循環型経済の構築、そして炭素自体を資源として再利用する技術であるカーボンリサイクル。欧米や中国とは事情が異なるのである。

カーボンニュートラル燃料の活用や現在開発中の水素自動車、そしてHEV、PHEV、FCEV、BEV、H2、CN燃料を組み合わせて国際競争に挑む戦略は、トヨタが取る合理的な戦略と言えるのかもしれない。

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テスラやBYDが持っていない強みとしては、水平分業であるにもかかわらず統制の取れた組織体制、もはや芸術の域に達していると言われるトヨタ生産方式、複雑な内燃機関エンジンを企画・設計し組み上げられる技術力、長年乗っていても故障知らずの品質、そして世界中のユーザーニーズや要望に応えられるメンテナンス機能としてのディーラーネットワークが挙げられる。