住宅ローンで余剰資金を持つことが「転ばぬ先の杖」

以前、金利が2%程度の際には、ローンは繰り上げ返済することを私は勧めていた。例えば、こんな具合だ。

「繰り上げ返済はノーリスクの金融商品に投資しているのと同じことになる。金利が2%なら、確実に2%の金利を得たことと同じ意味を持つ。普通預金に入れておいてもスズメの涙ほどの金利しかつかない時代に、住宅ローンの繰り上げ返済は確実にノーリスクで金利分の利回りを稼いでくれる優等生の金融商品である」

しかし、状況は変わった。子どもの進学や親の介護などでまとまったお金が必要になるケースが増えているが、個人にまとまった資金を低金利で貸してくれるローンは住宅ローン以外に存在しない。もしものために、住宅ローンで余剰資金を手元に持っておくことが「転ばぬ先の杖」になる可能性がある。繰り上げ返済するなら、退職金や相続などでまとまったお金が入り、出費の予想も立つようになってからでも遅くないと今では考えている。

家と電卓のミニチュア
写真=iStock.com/kokoroyuki
※写真はイメージです

急いで繰り上げ返済をしたら損になる

だから、1%未満で急いで返す意味はあまりない。それも残債が4000万円を切ったら、住宅ローン控除の0.7%の還付額が減るだけなので、逆に返しては損になってしまう。返済するなら、住宅ローン控除がなくなる少なくとも10年経過後にする方が正解になる。

また、金利が上昇する局面では不動産価格が下がるケースがあり得る。この際は、借り換えよりも物件を売却して住宅ローンを返済することも有効な選択肢になる。保有資産が目減りし、金利負担が増えるのだから、売るのは合理的な決断の1つになる。しかし、利上げの幅は大きくはないので、不動産価格への影響も軽微だと思われる。そうなると、価格が上昇中の現在、売却は不動産価格が下がり始めてからでも遅くはないと私は考える。

金利の影響が軽微だからこそ、安心して別の論点に着目した方がいいことになる。金利上昇が予想できる状況にある時、それを補塡ほてんして余りある政策が取られていることが多い。建物にかかる消費税増税の際に、駆け込み需要を抑制するために減税を組み合わせることはこれまでもよくあったことだ。今回注目すべきは、主に「省エネ」という名のついた断熱性能の良い住宅に対する税制と補助金だ。