子どもの免疫獲得を遠ざける抗菌・殺菌ブーム
近年、腸にさまざまな腸内細菌が棲むことが大事で、「腸内フローラの多様性」が健康を維持することがわかってきた。言い換えると、ある特定の腸内細菌の“ひとり勝ち”が良くないということ。
だからこそ子ども時代にはいろいろな菌に触れ、体内に取り入れたほうがいいのだが、コロナ禍より前から国内では抗菌・殺菌ブーム。体内に入る菌の数や量が減って、子どもたちの腸内細菌の種類や量が減少傾向にあるという。後藤医師は子どもたちの将来を憂慮する。
「人は皮膚にいる常在菌なども含め、いろいろな菌を体内に入れることで免疫を獲得していきます。子どもの頃に菌を排除してしまうと、免疫力が下がり、将来的に病気に感染しやすくなります。脳腸相関の観点からはキレやすい子や、発達障害の増加にもつながっていく可能性があると考えられます」
せめて食事からは、腸内フローラの原型がつくられる子ども時代に、発酵食品を通じて有益な腸内細菌を取り入れてほしいと思う。
就職した会社、年収とも、朝食摂取と関係がある
子ども時代に重要なこと2つめは「朝ごはんを食べること」だ。
農業・食品産業技術総合研究機構上級研究員の大池秀明氏によると「朝食を摂取している人としていない人とでは、最終的に人生が変わるくらいパフォーマンスが違ってくる」という。
「小・中学生の学力テストの結果は毎日朝ごはんを食べている児童が明らかに成績が良く、また体力テストの結果も良いのです。これらは相関関係であり、因果関係(=成績が良い原因は朝食摂取)ではありませんが、イギリスの学生を対象にした研究でも、アメリカの児童を対象とした研究でも、朝食摂取グループはミスが少なく記憶力が良い、正解までたどり着く時間が短いなどで、良い成績に結びついています。
このことから朝食を食べると頭が働く、もしくは食べないと頭が働かないということがわかります」
さらに東北大学の加齢医学研究所が大学生400人を対象にした調査では「朝食習慣があった学生のほうが志望する大学に入っている割合が高い」ことがわかった。それも朝食習慣のある学生のほうが“偏差値の高い大学”に入っているというから驚きだ。
「就職した会社、年収とも、朝食摂取と関係がみられます。35~44歳の会社員500人に、小学生から現在までの朝食習慣と、新卒時に就職した会社が第何希望であったかをアンケート調査すると、朝食をほぼ毎日摂取するグループは第一志望の企業に就職しているのです。
また現在の年収別にグループ分けすると、年収が高いグループになるほど、小学生時代から現在まで朝食をほぼ毎日食べていた人の割合が高くなりました」
反対に、ほとんど朝食を摂らない生活を続けてきた人たちは、年収500万円未満のグループに多いという。子どもや孫がいる人は、ぜひ気をつけてほしい。