育休を取得して感じた限界

育児に自信をみせる内田さんの育休取得歴は、三カ月と長くない。二人目の子どもの育児に取り組んだとき、当初は半年の予定だったが、途中で切り上げて、保育園に入れた。予定を変更したのには、二つの理由があったことを明かす。

率直に言って、無理でした。もう、限界でした。メンタル的には、仕事のほうが楽でした。家にいてもキツかったので、とりあえず外出しようと、博物館に行ったりしてました。子どもが見るはずはありませんが、どうせ、時間を潰すだけの毎日でした。

二つめの理由は、駐夫たちと同様、キャリアの中断を恐れたことだった。

自分のキャリアが寸断されるということが、めちゃくちゃ怖かったです。仕事ができないことが怖かったですね。転職した会社で、仕事がせっかく軌道に乗りつつあったのに、寸断されることによって、誰かに追い越されるんじゃないかという気持ちがありました。キャリアがある女性が感じるのは、多分こういうことなんだろうと強く思いました。
いっぱいいっぱいになっている父親
写真=iStock.com/BartCo
※写真はイメージです

女性だけにキャリアを中断させるのはずるい

働く女性が、産休・育休で職場を離れることで一時的なキャリア中断を余儀なくされることについて、心の底から理解した経験に基づき、内田さんは別の視点を得た。

ずるいですよね。育休を女性に取らせて、自分だけバリバリ働き続ける人って、ずるいと思う。そうじゃないですか。育児にかかわる社会的コストを、その女性がいる企業だけに負わせるわけですよね。その一方で、男性のキャリアばかりがうまくいくというのは、すごくずるいと思います。

夫婦が別の企業に勤めていると仮定し、妻だけが育休を取得する場合、人員減やポストの空白に見舞われ、しわよせを受けるのは妻側の企業だけになる。夫も育休を取得すれば、双方の企業が、内田さんの指摘する「社会的コスト」を公平に担うこととなる。妻だけがキャリアを中断する不均衡が是正されていない状況を、内田さんは「ずるい」と繰り返して強調したのだ。

そもそも、自営業やフリーランス、個人事業主には育休を取得できる制度が存在しない。そのため、自営業である内田さんの妻は育休を取ることができなかった。

男性の育休取得率は少しずつ上がってます。それは、女性も男性も両方取るというケースだと思います。ウチの妻は自営なので、私だけが取得できる状況でした。周囲の男性は(なぜ、妻は取らず、私しか取らないのかについての)理解があまりありませんでした。逆に、そこのキツさを一番理解してくださったのは、やっぱり女性でしたね。「大変だと思うけど頑張って」みたいな感じです。メンタル的なキツさを理解してくださったのは、女性でしたね。