成長した子供にとっては暮らしにくい可能性も

身長は1歳児から小学1年生になるまでに1.5倍程度、伸びます。2歳時でアンパンマンが大好きだった男の子が、4歳時で仮面ライダーにハマり、小学生でユーチューバーに夢中になります。子供は心身ともに日々成長・変化し、確実に大人に近づきます。

家づくり期間中など一時期の子供にフォーカスして計画すると、入居後数年は快適だとしても、成長した子供にとっては「暮らしにくい間取り」になることもあり得ます。

では、子育てをまったく考慮しなくてよいのかというと、そんなことはありません。子育てはかけがえのない経験ですが、負担やストレスを感じるのも事実です。それによって夫婦・家族関係に悪い影響を与えてしまう、といったことは避けたいですよね。

「子育てしやすい間取り」というと「(一時期の)子供にとって快適な間取り」と考えがちですが、そうではなく「親が機嫌よく子育てできる間取り」を目指すべきだと私は考えます。親の機嫌がよければ、子供にしっかり向き合う精神的な余裕を持てます。

ここからは、子育ての負担とストレスを減らす間取りについて、事例を交えて解説します。

子供用に玄関を「2段ステップ」にしたが…

事例1:幼児ファーストな玄関は子供にやさしいか

ディズニーが大好きな大谷さん夫婦は、2人目の妊娠をきっかけに外観はシンデレラ城、インテリアは『ふしぎの国のアリス』をイメージした家を建てたいと思いました。

選んだ住宅会社は、高気密高断熱や住宅性能に定評がある大手の住宅会社です。営業担当者や設計者と時間をかけて検討した外観は、シンボリックな八角形の塔と切妻屋根を組み合わせた近所の目を引くとても素敵なデザインです。

【図表1】大谷さんの家の間取り
『ふしぎの国のアリス』をイメージした家を建てたいと思っていたが……(出所=『この間取り、ここが問題です!』)

インテリアにもこだわりがあります。リビングには、子供しか入れない高さの部屋があり、ドアの取っ手には、海外通販で購入したドアノブ(ふしぎの国のアリスのキャラクター)を設置、大谷さんの2人の娘さんが遊んでいる様子が目に浮かびます。

デザインだけでなく、暮らしやすさについても細かく検討されています。キッチンは、リビング・ダイニングを見渡せる位置に配置していますし、収納も十分確保しています。

そして特徴的なのが、玄関は子供が使いやすいよう2段ステップにしていることです。ステップは、角がアールに面取りされており子供が安全に使えそうに見えます。また玄関奥には、大きな収納庫を設置しました。玄関土間の高さを通常よりも下げ、地面に近づけ段差を減らし、外遊びの道具や買い物を台車でそのまま搬入できる想定です。

とても考えられた設計に見えますが、この間取りにも3つ大きな問題がありました。