「近代化」「国際秩序の変化や大衆化」「グローバル化」の三部構成

では何のために資料を読みといて問いを考えるのでしょうか。歴史総合では、ただ適当に資料を出して考えさせているわけではありません。これらの問いをつうじて、近現代の世界における重大テーマについて考えを深めるように促しているのです。

その重大テーマとは、「近代化」「国際秩序の変化や大衆化」「グローバル化」です。歴史総合はこれらの三部立てのテーマで構成されているのです。「近代化」は、ヨーロッパで発生した「産業革命」や「国民国家」の成立、「立憲制」の確立などから構成されています。これらは歴史の個別的な出来事の歴史的な意味について考えるための概念です。この概念について歴史的に考えることが、歴史総合全体をつらぬく目的になっていて、それに応じて資料や問いが用意されているのです。ちょっと難しいかもしれませんが、具体的に考えてみましょう。

各国がいかに国民国家となったか、学ぶと違いが見えてくる

さっきのシェイエスの資料から、生徒は何を考えたでしょうか。「『国民』とはどういった存在なのか?」ですね。フランス革命のとき、国家の人口の圧倒的多数を占める、特権を持たない平民こそが「国民」だという意識が生まれたと。ごく一部の貴族が国政を動かしていた時代から、大多数の「国民」が国を動かす時代になったわけです。

Liberté, Égalité, Fraternité「自由、平等、友愛」の、フランス共和国の標語が刻まれた門
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この「国民」は、同じ国家に属しているという1点でつながっていますので、国家と自分たちを同一化します。こうした国家を「国民国家」と言いますね。国民と国民国家という考え方は、近代以降の世界中のどこでも発生していきます。

生徒はアメリカ独立革命やフランス革命について資料と問いによって思考し、国民や国民国家という概念とは何なのかを理解します。そのうえで、各国の近代の歴史を見ていくと、国によって国民国家の現れ方や国民のあり方が違うことに気がつくことになるのです。

ドイツでは、もともと統一国家がなくバラバラで、フランスの影響を受けてドイツ人という国民の意識が生まれたのに、ドイツという国家がありませんでした。アメリカでは、ヨーロッパからやってきた白人の植民者たちが国民国家を作り、もともとそこに住んでいた先住民を排除し、奴隷としてアフリカから連れてきた黒人を国民から除外していきました。これらの国民のあり方の違いは、各国の歴史におおきな影響をおよぼしていきます。