苦戦する中堅以下のデベロッパー

こうした事態で悲鳴を上げているのが、マンション専業の中堅以下のデベロッパーたちだ。彼らは大手ほどの資金力を持ち合わせていない。マンション分譲一本やりできていると、毎年土地を仕入れて、建物を建設し、分譲して利益を得なければ社員を養うことができない。大手デベロッパーなら賃貸オフィスや商業施設、ホテル、物流施設など多分野に事業展開しているので、マンション事業でたとえ景気が悪くなったとしても、他の事業で収益を確保できる。

マンション専業デベロッパーでも、都心好立地の土地を押さえられれば、超高額マンションを開発するチャンスはある。しかし都心好立地ほど売り物件は少なく、競合も激しくなる。また彼らは富裕層や投資家が好むマンション仕様などに詳しいわけではなく、また富裕層につながる販売網を整えている業者も稀だ。ましてや海外進出して分譲するノウハウも体力もない。日銭が入ってくるようなオフィスや商業施設も所有していない。

というわけで最近のマンションマーケットは大手による寡占化が進んでいる。首都圏で20年前には毎年8万戸から9万戸の新築マンションの供給があったマーケットは約3分の1に縮小し、その間にマンションデベロッパーの数は4分の1になったと言われている。これは大相撲に例えれば、土俵が3分の1になり、横綱から前頭14枚目までいた幕内力士が小結以上の三役と横綱だけになったのが現在のマンションマーケットといえるのだ。

どうやって糊口をしのいでいるのか

中堅以下のマンション専業デベロッパーはどうやって糊口をしのいでいるのだろうか。幸い資金調達においてはアベノミクス以来、金融機関からは調達がしやすい状況が続いている。

多額の資金供給を受けた不動産業者は本来であれば自身の事業のため、つまり土地を買う、建物を建設するための事業投資に使う。ところが実態はこうして調達された資金のかなり多くが土地転がしやマンション転がしに充当されている。

つまりデベロッパーの開発用地として都心の土地を買って上納する、大手デベロッパーが分譲するタワマンをまとめて購入して完成後に転売する、などの事業資金として使っているのだ。デベロッパーにしてもタワマンは数百戸から1000戸を超える住戸を効率よくさばく必要がある。1社でたくさんの住戸を買ってもらえるのは手間がかからず歓迎だ。またある程度まとめて買わせることで「第1期即日完売!」と銘打って、販売の促進につなげることもできる。