中古マンションマーケット“活況”のウラで高額すぎる新築マンションに苦しむ人々(牧野 知弘)

不動産経済研究所が調査、発表する「新築分譲マンション市場動向」によれば、2023年上半期(1月~6月)首都圏(1都3県)における新築マンション供給戸数は1万502戸。平均価格は8873万円と前年同期比で36.3%もの大幅な値上がりとなった。またこれを東京23区に限定すると平均価格はなんと1億2962万円、60.2%上昇という、信じられないような高値である。坪当たりの単価に直すと1坪(3.3㎡)635万円。庶民感覚からいえば、都区内の新築マンションは一般的なファミリー向けである66㎡(20坪)はおろか、10坪=6350万円すら手が届かないというのが今のマーケットの現実だ。

中古マンションマーケットへ

坪単価が600万円を平気で超えるようになり、新築分譲価格が1億円を超えるようになるマーケットで、世帯年収が437万円に過ぎない一般国民の存在感は薄れるばかりだ。富裕層は高額帯のタワマンやブランデッドマンションに住み、投資用で買ったホテルコンドミニアムでスキーやマリンレジャーを楽しみ、温泉にどっぷり浸かってまったりできるのに、一般国民はどんなにローンを組んでみたところで、「高くなりすぎた」新築マンションマーケットからは相手にされていないことは明白だ。

彼らが向かうのは中古マンションマーケットということになる。実際、中古マンションマーケットは近時、成約価格が急上昇している。東日本不動産流通機構の調べによれば、2022年における首都圏中古マンションの成約件数は3万5429戸、平均成約価格は4276万円だった。11年と比較すると件数で22.7%増、平均成約価格で69.0%もの大幅な価格増となったことがわかる。

写真はイメージ

ちなみに同期間における中古戸建て住宅の成約件数は27.2%増、平均成約単価は26.5%増だったから、中古マンション価格が突出して上昇したことになる。

つまり供給戸数が減って価格が高くなった。その結果としてあぶれた顧客が中古マーケットに流れ、価格が急騰したさまがはっきり見て取れる。

このように記すと、なにやらデベロッパーが意地悪をして一般国民向けのマンションを供給することをやめてしまったかのように映るが、実際問題として値上がりが続く土地価格と暴騰する建設費では一般向けのマンションを企画しにくくなっているのが実情なのだ。 

彼らだって儲かるのなら一般向けのマンション分譲を当然やりたいのだが、土地価格の安い郊外、駅から距離のある土地を仕入れたところで、あまり変わらない建設費でマンションを造っても、販売価格が高すぎて、一般国民からは見向きもされないことをわかっている。

結果として彼らの戦略は、富裕層が好む都心ブランド立地での超高額マンションか、主要鉄道の駅前などで市街地再開発の手法で容積率のボーナスをもらって分譲するタワマンに絞っているのが実情だ。また都心でも今後の人口減少が生じることを見越して、一般ファミリー用のマンションについては東南アジアなどの海外での展開を始めており、もはや国内ファミリー層など彼らの眼中にはない。