シリコンバレーの起業家と哲学の関係

ここで少し韓国の話をすると、韓国の企業界が過去10年以上かけて哲学(人文学)を熱心に勉強したにもかかわらず、これといった革新を起こすことができなかったのは、哲学(人文学)の知識だけに触れようとしたからである。

哲学書(人文学書)を読んで哲学(人文学)の講義を聞くという、このふたつにだけ重点を置いたとでも言おうか。韓国企業界の哲学(人文学)旋風は、シリコンバレーから来たと言ってもよいだろう。それならば、シリコンバレーの起業家は、韓国の起業家のように哲学(人文学)を「勉強」しているのだろうか? そうではない。

シリコンバレーの起業家は、哲学(人文学)を自分の事業とIT技術に直接応用している。哲学者でありながらCEOでもあり、IT科学者でありながらIT技術者でもあると言えばよいだろうか。

彼らが経営のアドバイスを求める哲学者も同様である。大学という垣根に閉じ込められたまま死んだ知識だけを掘り下げる哲学者ではなく、いま目の前で生きて動く知識、すなわち企業経営、IT、人工知能などに関して卓越した知識を有する哲学者に経営のアドバイスを求めているのだ。

すでに述べたように、ピーター・ティールは、シリコンバレーの人工知能の天才たちが師匠と仰ぐ人物である。そして、「人工知能時代に私たちはどんな準備をしなければならないか」および「とりわけ経営者はどんな準備をしておくべきか」という質問に、最も優れた答えを示すことができる人物だ。

強力なAIでも打ち破る最高の武器

彼は「ただひたすら哲学を!」と叫んでいる。実際に、哲学者を自分の人工知能ビッグデータ企業パランティアのCEOの座に迎え、パランティアを全世界の国家情報機関から依頼を受ける企業にまで成長させた。

まるでビル・ミラーがウォール・ストリートでそうだったように、ピーター・ティールとアレックス・カープはAIには絶対に持つことのできない人間固有の能力である哲学的思考を通じて、AIを秘書のように従えた。そしていまこの瞬間にも、シリコンバレーの新しい記録を塗り替えている。

このふたりだけではない。シリコンバレーの起業家は、皆、哲学を実践している。とくに、人工知能関連企業の経営者であればあるほど、必死で実践している。人間固有の共感能力と創造的発想力を最大化させることができるツール、強力なAIでも打ち破ることができる最高の武器が、哲学だからだ。

おかげでいま、哲学はシリコンバレーで新しい全盛期を迎えている。