家計は毎月赤字…貯金が底を突くのは時間の問題

自宅の修繕費用のねん出方法を考える前に、「引っ越しすることは考えられないか」と尋ねたところ、父親は死ぬまで、今の家から動きたくないとのこと。母親は父親が亡くなった後は、長男と住み替えするのも仕方ないと思うが、今すぐの引っ越しは考えられないとのこと。長男はできる限り、今の家に住み続けたいが、現実に無理であれば、収入のない自分は受け入れるしかないと考えているそうだ。

3人の考え方を踏まえると、雨漏りの修繕はおこなうしかなさそうだ。とはいえ、最低でも350万円以上の修繕費用を出すのは厳しいので、350万円の見積もりを出している会社に、「なんとか200万円以内で、最低限の修繕をお願いできないか」と相談してもらうことにした。その結果、220万円くらいまで見積もりの予算を落とし、修繕工事をおこなうことになった。

中谷家の場合、現時点でも月々3万〜5万円の赤字が発生している。収入(年金)は月22万円。支出は月25万~27万円。固定資産税(年約6万円)や家電の買い替え費用などの負担を考えれば、年間で60万〜70万円程度の赤字が発生しているはずである。

父親の余命を仮に10年とした場合、亡くなるまでに現在の貯蓄(家族計1100万円)から600万〜700万円が生活費の赤字で消えていくだろう。介護が発生したら、赤字額はさらに増える計算になる。

父親が「今の家で人生を終えたい」という希望を持つ以上、修繕工事をおこなうのは必須条件となる。とはいえ、修繕をしたのち、父親が存命中に貯蓄が底を突かずに生活を成り立たせるには200万円くらいの支出が限界だろうと考えられた。

日本の1万円
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雨漏りの修理を行った後、両親が揃っているあいだはできるだけ生活費を抑えながら、自宅で暮らしていく。だが、父親が亡くなった後は、母親の年金だけで暮らすのは無理がある。その頃には、自宅の築年数が60年前後に達しているはずで、経年劣化を考えると自宅で暮らし続けるプランも成り立ちにくい。

そのため、父親が亡くなった後は自宅を売却して、賃貸住宅に住み替える必要がありそうだ。母親の年金だけでは賄えない生活費については、自宅の売却代金を取り崩しながら補填ほてんしていくのが現実的だろう。

そこで、売却代金について見積もってみることにした。建物については、売却する際にプラスの評価ではなく、建て壊すために費用を引かれてしまうはずだが、路線価を基に売却見込み価格を予想したところ、家を壊す費用を差し引いて1200万〜1300万円程度は手元に残りそうだと予測ができた。