上司と一緒にお題を読み解き、解答を練る

とはいえ、会社のWillを確認することはなかなか簡単ではありません。なぜなら、会社として求めている新規事業としてのイメージは明確でなく、また許容できる事業範囲のイメージも明確でないからです。つまり承認者自身、新規事業検討を進める際、その検討事業に何を求めているのか、何をリスクと感じるのかが予め明確でないことが多いのです。

このような会社の状況や上司の下で新規事業検討を上手く進めるにはどうしたらよいのでしょうか。それは一言で言うなら「上司を新規事業検討の一員として、プロセスの中に組み込む」ということです。

すなわち、上司も新規事業創出をやった経験に乏しいし、よく分かっていないのだ」との認識の下、上司から「お題を受け取り」、「それに回答する」のではなく、上司と「一緒にお題を読み解き、解答を練る」のです。

新規事業提案が受け入れられるのには、提案が「会社Will(期待・意志)」と合っていることが必要です。すなわちその提案が、会社が想定する(現在から将来の)事業の範疇にある、つまり会社の方向性と合っていることが必要になります。また、その提案の承認者が、その提案検討・実現により生じるかもしれないリスクを背負うことができるということが必要になります。

それを吟味できるのは、承認者だけです。

ミーティングをするビジネスパーソンたち
写真=iStock.com/kazuma seki
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上司が「避難タウン構想」を却下した理由

先の「避難タウン構想」提案に対して上司が言った「そんなの、やって意味があるの?」は、経営層が新築物件の販売が伸び悩む中、住み替え需要の掘り起こしなど、あくまでも従来の不動産業態の中での新規事業を想定していたからなのでした。

また、A社はニュータウン開発・運営には関わったことがなく、UR都市機構との関係が薄いこと。そして、構想実現には必要に違いない既存入居者との交渉の負荷が大きそうなこと。行政との共働が必要で企業単独で実施できる内容ではないことなど提案の実現にも多くの懸念点を感じてしまったようです。もう一つ被災者は被災地から離れたがらないかもしれないという懸念があったのかもしれません。