――パートナーの方は口数が少ない?
恵 話さない、言わないです。空気を読むという文化なんですよね。でも、それだって何年もかけてわかるかどうかというところですよ。日本の社会に馴染めるかどうかは、そこが大きなポイントかもしれないですよね。
――彼には「もっと話して」とリクエストしますか。
恵 夫には言うけど、他の人には言えないです。でも、本当は何を考えているのか、ちゃんと教えてほしい。そもそも、彼の両親に私を紹介してくれる時でさえ、夫は私がエジプト人だということすら伝えていなかったんです。義理のお父さんお母さんは初対面の時に、「えっ、日本人じゃないの!? しかもエジプトの方!?」と、そこではじめて知ったんです(笑)。でも、すごく良い方だったので大丈夫だったんですけども。
あんまり話してくれないとか、仕事で毎日帰りが遅いのは嫌なところですが、エジプトの男性よりも家事・育児をしてくれるし、妻を大事にする文化があるように感じます。
エジプト人女性の国際結婚事情
――ご家庭でのコミュニケーションは何語で?
恵 夫とは日本語で、娘とはアラビア語だけですね。
――日本語との併用ではなく、お子さんとはアラビア語オンリー?
恵 はい。そこは厳しくやっていて、私は生まれてから一度も、子どもに日本語で話しかけていません。アラビア語を話せるようになってほしいというのはもちろんですが、日本でアラビア語を話せるのは、ほとんど男性なんですね。
そもそも、アラブの世界で国際結婚するのは男性が圧倒的に多くて、特に昔は、女性には海外に出てほしくないという文化でしたから、その影響もあるでしょう。私の父親も、母はイラク人なので、国際結婚です。
そういう意味では、両親は、私の国際結婚を受け入れやすかったと思いますね。これがエジプト人同士の両親だったら反対にあっていたかもしれません。
――恵さんのように日本人男性と結婚するというのはレアケースですか。
恵 今は文化的にも、エジプト人女性の国際結婚は問題なくできるようになってきていますが、それでも、同じ中東圏での結婚が圧倒的です。
私がエジプトで結婚の登録をした時、行政機関の受付の人に、「日本人と結婚できるの!? 日本人ってどんな人?」とか聞かれました。エジプト人女性が他国の、しかもアジアの国の人と結婚することはとても珍しいことです。
実際、日本人と結婚したエジプト人女性とはたぶんほぼ全員とつながっているくらい、数少ない存在なので、娘にもエジプトの文化を日本で伝えていってほしいと思っているんです。