問題は環境を変えなかったこと
多くの人と同じように、サムも気づいていなかった。習慣的な行動は、環境からの視覚的なきっかけや内的なきっかけ(身体感覚や経験)によって、自動的に引き起こされる。
サムが知らなかったのは、飲酒のきっかけがストレスだけではないことだ。きっかけは、ありとあらゆる場面に転がっている。ストレス、仕事が完了したこと、仲間と会ったこと、いつもの帰り道、キッチン、ディナーテーブル――すべてが飲みたい気分にさせる。そして、たいていの場合、欲求が勝利をおさめる。
サムの飲酒には、まだ自覚していない、深い心理的な原因などなかった。本人が主張する「意志が弱いせいだ」というもう一つの説も、間違っていた。問題は、サムが環境を変えなかったことだ。サムは、カジノに腰を下ろしながら悪い習慣を蹴散らそうとしているギャンブラーのようなもの。
サムと私が最初に取り組んだのは、意志の力と習慣形成の科学について学ぶことだった。では、一緒にこの科学をマスターしよう。そうすれば、サムが陥ったわなを回避できる。