これは朝ドラに限ったことではないですが、性的な描写も最近は悩みますね。描写というのか、例えば『アンダードッグ』(2020年)というボクシングの映画を作ったときは、評論家の方から「性描写が余分だ」とか言われたりして。セックスがテーマになってない限り、性描写は余分と思われてしまうんだなって。

人の普通の営みで、ことさら強調するわけではないんですけど。ボクサーの日常を描くことがテーマで、そこに性描写を入れたら文句が出るって、じゃあボクサーはセックスしちゃダメなの? って言いたくなりますよ。

――今回草彅剛さんが、初めて朝ドラに出演しています。お会いしましたか?

足立 草彅さんとは1回もお会いしたことがないんですよ。『拾われた男 Lost Man Found』(NHK BSプレミアム・2022年)って連続ドラマの脚本をやってるんですけど、それに主人公の兄役で草彅さんが出演されているんです。重要な役柄だったんですけど、そのときも会えなくて。『拾われた男Lost Man Found』のときは、撮影の見学に行った時間が、たまたま草彅さんの出番じゃなくて。

東京ならフラッと行けるけど、大阪だとそうはいかない

――今回、撮影の見学などには行きましたか。

足立 2回行きました。

――大阪制作だと、完全に大阪での撮影になる?

足立 そうなんです。たとえ舞台が東京でも、大阪のスタジオでやるという。ロケも西日本ばかりです。

まず、クランクインの日は顔合わせがあるので大阪へ行きました。クランクインしてからは書くことに集中していたので、全然行けなかった。これが東京のスタジオだったら、フラッと行けるかもしれないけど、大阪だとそうはいかないですからね。

2回目は、今年の8月21日ですね。ちょうど、監督をやった『雑魚どもよ、大志を抱け!』の舞台挨拶が京都みなみ会館であったので、それに合わせて見学しに行きました。

――スタジオでは、何週目の撮影が行われていましたか。

足立 何週目を撮る、といった進め方ではないんです。ある部屋のセットを組んで、その部屋のシーンをまとめて撮っていっちゃう感じなんですね。

――たとえば、“はな湯”の番台前のセットを組んで、第3回の番台前のシーン、第9回の番台前のシーンをまとめて撮ってしまうと。

足立 そうです。だから、僕が見に行ったときはおでん屋台のシーンをまとめて撮っていて。屋台の親父の伝蔵を演じているのが、僕の作品によく出てくれている坂田聡さんで。坂田さんと屋台に集まるほかのキャラクターをやっている俳優さんたちで、「とにかくおでん屋台のシーンを全部撮っちゃうぞ」という日でしたね。

――今回、どうしても生で演技を見てみたい俳優はいましたか。

足立 「あのシーンの撮影って、どうするんだろ? 見てみたいな」ってのはありますけど、「あの俳優さんに会いたいな」はないんですよね。もし、どなたかと会って「このへん、こんな感じにできませんか?」とか「このセリフ、ちょっと言えないですね」なんて言われたらどうしようとか考えてしまうんです(笑)。

――何か言われたら脚本を直してしまう自分がいるかもと。

足立 直立不動で直してしまうタイプです。「はい!」って。だから、なるべく決定稿を渡したら俳優さんとは会いたくないですね。まぁ、僕が勝手にそう怖がってるだけなんですけど(笑)。

 写真=佐藤亘/文藝春秋

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